知恵の経営

第190回

単身赴任は「当たり前」?

アタックスグループ 2019年3月26日
 
企業経営の最大・最高使命は、企業に関わる全ての人々の永遠の幸せの追求・実現である。そして、経営者をはじめとした組織のリーダーが、とりわけ、その幸せの追求・実現に注力しなければならない人は「社員とその家族」だ。それもそのはず、社員満足度なくして顧客満足度などあり得ないからである。

それゆえ、企業経営者やリーダーは、いつでも・どこでも、またどんな事態になっても、社員とその家族の命と生活を守らなければならない。逆に言えば、もしもそれができなくなったら、経営者やリーダーは潔く企業から退出すべきである。

経営者やリーダーが、社員とその家族の幸せの追求・実現のために、やるべきこと、やってはいけないことは多々あるが、今回は社員の「単身赴任」について考えてみよう。

これまでの企業経営においては、家族ぐるみであれ、単身赴任であれ、遠隔地への転勤について、疑問を呈する人はほとんどいないばかりか、当然のことのように実行されてきた。

また企業によっては、遠隔地に赴任し、そこで成果を上げることが、その後の出世の登竜門などと位置付けているような面もあった。

しかしながら、企業経営の使命と責任は、人、とりわけ社員とその家族の幸せの追求・実現であることを考えると、本人やその家族らの強い要望など、特別な事情がない限り、社員の遠隔地への単身赴任は決して望ましいことではない。とりわけ、社員の子供が中学生以下の年少の場合、原則辞めるべきといえる。

というのは、単身赴任は、誠実に生きている社員ならば、最も幸せを実感する家族だんらんの一時を、企業の都合で奪い・切り裂いてしまうからである。

先日、ある経営者から、社員の小学校1年生の女の子が書いた800字ほどの作文を読ませていただいた。内容は「小学校にも、ようやく慣れ、友達もでき楽しいけれど、とても寂しいことが1つあります。それは毎日遊んでくれていた大好きなお父さんが、仕事の関係で、遠くの町に転勤し、学校から帰ってきても、会えなくなってしまったことです…。お父さんから転勤の話を聞いた夜は、悲しくて一晩中眠れませんでした…」とあった。

「私たちが、これまで当然・当たり前と思っていた単身赴任が、こんなにも小さな子供たちの幸せまでも奪い、悲しませていたのか…」と、深く考えさせられた。

「異常が長く続くと異常があたかも正常に見える」「異常と比較すると正常があたかも異常に見える」ではないが、企業経営を原点的に見直す時期に来ている。

<執筆>
経営学者・元法政大学大学院教授 人を大切にする経営学会会長 坂本光司

2019年3月26日フジサンケイビジネスアイ
 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


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