小野田産業(静岡市清水区)という住宅メーカーがある。創業は1945年、現社長の実父がスタートさせている。もともとは製材業として創業し、その後の住宅ブームもあり、現在の住宅産業に業態転換している。
現在は従業員数25人の注文住宅メーカーだが、施工する住宅が全国の関係者の間で注目を集めている。それは同社が施工・販売する「断震住宅」。商標ブランドは「パーフェクトハウス」である。つまり、どんな大きな地震であれ、この住宅は揺れそのものを断ってしまう住宅だからだ。
「そんなまさか」と思う人々もいると思われるので、少し説明をする。住宅に取り付けられているセンサーが揺れを感知すると、住宅そのものを空気の力で約2分間、まるでホーバークラフトのように浮上させてしまうのである。
そればかりかエアタンクには、余震4回分の空気が貯蔵されているため、余震にも対応できる。その浮上幅は約1.5センチ。もとより地震の揺れが収まると、位置戻し装置によって、建物は下降しながら元の位置に戻る仕組みだ。
筆者は噂を聞いて、同社を訪問し、この「エアー断震システム」が装着された体験車に乗ってみた。最初に断震システムを作動させず、震度7を経験したが、それはまさに、たんすやテレビが横に飛んでくるといった激しい揺れだった。
次にシステムを作動させた状態で震度7を経験したが、揺れはほとんど感じることがないばかりか、近くの固定したタンクに入った水も、波打つこともなかった。
このパーフェクトハウスは、全国各地に既に200棟以上販売されている。あの東日本大震災時においても、その断震力が証明されているという。
このエアー断震システムは、ある町の発明家が考案したもので、同社がいち早く着目し、現在、静岡県の総販売代理店となっている。その施工実績は日本一という。
余談になるが、「いかに断震といえども、津波には勝てない」といったニーズ・ウオンツに対応するため、同社では、「それならば…」ということで、最近「シェルター」の開発を進めている。
発泡スチロールに特殊な塗料を塗布すると、鉄並みの硬度を誇り、シェルターは破壊されることがないばかりか、水には浮いているので、津波にも耐えられる。
ちなみに、こちらの値段は4人から5人が退避できる大きさで100万円以下という。
<執筆>
法政大学大学院政策創造研究科教授 アタックスグループ顧問・坂本光司
2018年1月31日フジサンケイビジネスアイ掲載