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知恵の経営

第182回

出産・子育て支援の充実を

アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)  執筆

 
社員の子供の数が多い会社は「いい社風」。つまり会社の中にいい風が吹いているという特長があることを以前、書いた。

こうした会社のもう一つの共通した特長は、直接・間接を問わず、出産や子育てのための支援制度が充実している点だ。しかも、単に制度が充実しているというだけではなく、心安らぐ内容の制度が散りばめられ、それらが気兼ねなく利活用されている。

大企業・中小企業を含め、全国の約1000社に対し、出産や子育てに関するウェブ調査を実施した。それによると、回答企業のうち33.4%。つまり3分の1の企業は、法定の福利厚生制度以外は、社員の出産や子育てに対して何も実施していなかった。

実施している内容を複数回答で聞いたところ最も多かったのは「短時間勤務制度」の41.1%。以下、「育児や介護のための法定以上の長期間休暇」の30.2%、「フレキシブルな勤務制度」27.9%、「特別休暇制度」17.5%、「時間休暇制度」14.5%、「残業や会議の免除制度」11.3%、そして「在宅勤務制度」10.4%などと続いた。

つまり、社員や家族の出産や子育てを支援する制度を設けている会社は、いまだに極めて少ないのが実情だ。

多くの子育て中の社員や家族が願う「時間単位の有給休暇」でいえば、その導入企業はわずか14.5%。7社に1社程度にすぎない。

こうした職場環境では、社員や家族が出産や子育てをすることは容易なことではない。それどころか、社員や家族は、自身の命と生活を犠牲にしなければ、出産や子育てに多くの時間を費やすことができない。

しかし、社員の子供の数が多い会社においては、この面でも大きく異なっている。

「時間単位の有給休暇制度」を実施している割合は、一般企業は14.5%と低かったが、子供の数が多い50社では大半の企業が導入していた。こうした傾向は、一般企業でわずか10%程度にすぎない「在宅勤務」「短時間勤務制度」でも同様で、子供の数が多い50社では、50%以上の企業で導入されていた。

訪問調査した中で、とりわけ社員の子供の数が多かった会社の社長が、「法定だからとか、経費の損金算入ができるからなどで制度の導入の是非など判断していない。その制度や運用が真に、社員や家族のためになるか、ならないかで決めている…」と語っていたことが、強く印象に残った。

<執筆>
経営学者・元法政大学大学院教授 人を大切にする経営学会会長 坂本光司

2019年1月1日フジサンケイビジネスアイ掲載
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


Webサイト:アタックスグループ

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