今回はメガネ・コンタクトレンズの専門店、21(トゥーワン、広島市佐伯区)を取り上げる。
人を大切にする経営学会中国支部の設立総会が6月23日に開かれたのに合わせ、その前日に会員と企業視察に訪れ、創業者の一人で相談役でもある平本清氏から、話を聞いた。
平本氏は、もともと広島県内にあったほかのメガネ店に勤め、本店副店長、商品部長などを歴任した。しかし、同族企業だったその会社の後継者争いに巻き込まれ、解雇された同僚4人で設立したのが21だ。
解雇された会社で新社長となった人物と全くそりが合わなかった。平本氏が同じ広島でメガネ店を創業することを快く思うわけはなく、当然潰しにかかってくることが分かっていただけに、平本氏は必死だったという。3年経って経営が軌道に乗っても安心できなかった。
実際、解雇された会社を恐れて会社を辞めていく人もいた。でも、そんな状態でも残って一緒に戦ってくれた人がいた。その人たちには、最大限の誠意をもって“お返し”をしたかった。こうして生まれたのが、社是「21は社員の幸福を大切にします。社員は皆様の信頼を大切にします。」だという。
さらにその解説文として、以下の内容が続く。
「皆様とはお客さま・取引先・眼科医・同僚・家族などをさします。社員が不幸なのに、お客さまを幸せにできるはずはないのではないでしょうか。ほとんどの企業は『顧客の満足』を第一優先にあげていますが、社員は売り上げノルマに追われ、社畜状態です。企業倫理が問われる現在、経営者ばかりではなく社員のモラルも重要になってきております。消費者の立場で判断し『正しいことは正しい、間違っていることは間違っている。』と言える21でありたいと考えています。」
事実、同社には社員へのノルマばかりか店単位の売上目標もない。その理由はノルマを与えると、顧客の要望より上司の要望を優先することになり、顧客満足度を無視する接客につながる恐れがあるし、同時に社員の笑顔も少なくなるためだ。
目標やノルマがなければ、人事評価はどうなっているかが気になるところだが、一般社員には人事評価はなく、1年ごとに、本給が一定額昇給し、30歳で昇給はストップとなるが、業績の乱高下に関係なく、それまでは安定して昇給する仕組みとなっているそうだ。
同社に関しては、まだまだ伝えたいことは多々ある。続きは次回に紹介したい。
<執筆>
アタックス研究員・坂本洋介
2017年7月17日フジサンケイビジネスアイ掲載