知恵の経営

第204回

サービスの取捨選択が奏功

アタックスグループ 2019年7月9日
 
大阪市に本社を置き、国内主要都市や海外にもホテルチェーンを展開するスーパーホテルを紹介する。1989年に創業者で現会長の山本梁介氏が設立したのが始まりだ。山本会長は大学卒業後、25歳の時に家業の繊維業を引き継いだが、単身者向け賃貸マンション経営に事業転換し、若者向けシングルマンションに特化した。

入居者からは毎日多くの苦情が寄せられた。それらを整理すると、睡眠妨害に対する不満が多かった。これらの課題に取り組んだところ、高収益を上げるようになり、関西を中心に、最盛期には6000室ほど展開するまでになった。この経験が、その後のホテル事業のビジネスモデル構築に大いに役立った。

ホテル業を調査したところ、ホテルは宿泊して眠る施設であるにもかかわらず、意外にも眠りにこだわったホテルが存在していなかった。ホテルのヘビーユーザーであるビジネスパーソンに一番大切なのは翌日の商談に成功すること。それにはぐっすり眠れることが最重要と考えた。「眠り」を、ほかのホテルの追随を許さない独自の強みにまで高めると決めた。

まず、大阪府立大学の清水教永名誉教授との共同研究で睡眠の研究所を立ち上げ、パジャマやスリッパの共同開発を行った。また、室音や照明などの標準を決めて設計・施工を進めた。特に音については、廊下に面する部屋のドアの周りにゴムパッキンを貼り防音効果を高めた。窓も二重サッシにし、外からの音も遮音した。これにより、客室には40デシベル以上の音は入らず、図書館レベルの静かさになった。
 
枕にもこだわった。枕が原因で眠れないというクレームも多かったため、さまざまな枕の開発を試みたが、最終的には、フロント脇に置いた多数の枕の中から、自分に適した枕を選んでもらうことにした。その結果、枕のクレームはほぼゼロになった。ベッドも通常よりも幅の広いオリジナルベッドを使うこととした。さらに、照明もロビーから廊下そして部屋へと移動していく際にだんだん明るさを落とし、自然と眠りにつきやすい設定にしている。

眠り以外では、無駄を徹底削減した。具体的には、部屋に電話を置かない、冷蔵庫に飲み物を入れないなど、100人中1人しか困らないサービスは切り捨て、精算の手間を省いた。さらに、チェックインの自動化に取り組んだ。その結果、フロント要員が減り、人件費をセーブできた。お客さまも、朝ギリギリまで眠れ、チェックアウト時、フロントに立ち寄る必要がなくなった。

省けるものは徹底的に省いてとことん眠りにこだわり、宿泊客に安眠を提供し続けることで、多くのお客さまから高い評価を得ることに成功している。


<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明
2019年7月9日フジサンケイビジネスアイ掲載
 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


HP:アタックスグループ

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