新型コロナウイルスとの終わりの見えない戦いが続いている。既に長期戦の展開を見せており、企業活動の縮小・自粛などの影響を受け、新型コロナウイルスの影響を受けた倒産「新型コロナ関連倒産」も月を追うごとに増加をしている。
実際、東京商工リサーチが、14日午後5時現在でまとめた「新型コロナウイルス」関連倒産状況を見ると、倒産は99件を超えた。ちなみに、2月の倒産は1件、3月の倒産は9件、4月の倒産は10件であったので、この1カ月で急増している。弁護士一任などの法的手続き準備中は48件で、こちらも2月が2件、3月が13件、4月が15件という状況だった。体力の脆弱(ぜいじゃく)な中小・零細企業も多く、今後しばらく、この倒産が増加していくことは避けて通れないだろう。
その一方で、東商リサーチは3月18日に「『コロナ破たん』って言うな!」という記事をホームページに掲載している。その記事によると、掲載時点でのコロナ関連倒産は倒産6社、破綻3社の9件だったが、各企業を詳しく見ると、新型コロナの影響を受けたことは間違いないが、必ずしも、それだけが理由ではなかったことが分かる。
事実、同社が企業に付与する「評点」(信用評価、100点満点)があり、50点前後を取引の判断目安としているが、9社のそれは最高が49点、最低は38点、平均44.1点だった。つまり、新型コロナの影響を受ける以前から、もともと経営不振の状況にあったのだ。
さらに、記事の中で、ある学習塾の事例が紹介されていた。それによれば、その企業関係者などは「新型コロナは関係ない。なぜ、そのような報道になったのか不思議だ」「長年赤字続きだった。生徒数の減少と競争からの脱落が原因。新型コロナはタイミングが合っただけ」と明かしていたという。そのため、同社ではこれを関連倒産には含めていない。
このほかにも、コロナ関連倒産の事例を見ると、そのいくつかは過去何年間か既に赤字だったケースもある。つまり、新型コロナの影響が出る以前から、既に経営上の問題を抱えていて、それを解決することができていなかった企業の倒産も少なからず紛れていたのである。
「今は、新型コロナ被害の真っただ中だから、この時に倒産・破綻しておけば、自社の業績不振、経営者の努力不足を隠せるから」といった、今回の新型コロナに便乗した倒産・破綻はないと思いたいが、現在起きている倒産・破綻を全て新型コロナ関連倒産とひとくくりにしてしまうのは危険に感じる。
中小・零細企業に支援・補助をという流れになっているが、なぜ倒産・破綻したかの真の要因を見過ごしてしまうと、これからも同じ過ちが繰り返されることになるだろう。
アタックス研究員・坂本洋介
2020年5月19日フジサンケイビジネスアイ掲載