知恵の経営

第106回

高齢者は替え難い財産

アタックスグループ 2017年3月1日
 
 今回はパイプの加工・曲げ・切断・切削などを行うコーケン工業(静岡県磐田市)を取り上げる。一貫してパイプ製品に携わり、多品種少量・短納期で高品質な部品を提供するため、全工程を社内で一貫生産し、同業他社や大手ができない面倒で高度な加工に対応し、多くの顧客から高い評価を得ている。

 同社の特徴の一つが高齢者の積極活用だ。現在は10代から80代までと実に幅広い年代の社員がいて、さながら3世代家族のように働いている。しかも一般的な企業なら、定年退職を迎える60歳を超えた社員が全社員の36%を占め、80歳以上は8人というから驚きだ。ちなみに男性最高齢は88歳、女性は85歳という。

 なぜ、高齢者雇用に積極的に取り組むようになったのか-。飯尾祐次社長は「バブル時代に、若者の採用が難しく、苦肉の策で『90歳まで採用します』と元気な高齢者を募集したのが始まりだ」と振り返る。

 他社からは「高齢者ばかり雇用してどうするんだ」と言われたそうだが、雇用してみると、経験豊富で出勤率も高く、大きな戦力となった。仕事面だけでなく、孫のように若手の面倒をみて積極的にアドバイスもしてくれる。若手たちも、高齢者が働きやすいような工夫を考えるなど、互いを思いやりながら働く良い関係が築かれている。

 高齢者たちは働くことが生きがいだから、年齢制限を設けず社員自身が辞めると自己申告するまで、何も言わないという。唯一の条件は、自分で出社してくることだ。家にいるより張り合いがある。当てにされるのがうれしい。会社に来れば仕事があり、仕事がやりがいになっているから毎日、出社してくる。ちなみに65歳以上の社員の賃金は、それまでの賃金を維持している。この点からも同社がいかに高齢者を大きな戦力として期待しているかがうかがえる。
 
 社長から、ある高齢社員の話を聞いた。80歳になる女性社員が事務所にきて全員に聞こえるように大きな声で「社長、そろそろ会社を辞めようと思う。もう80にもなった。これ以上いると皆に迷惑をかけるかもしれない。そう思って相談に来た」と言った。

 その際当時の社長は「あなたがわが社に必要だということは、あなたが一番知っているはずだ。調子が悪かったら1日を半日にするか。1日おきにするか。どのような形態でも構わない。いないと困るからね。二度と言わないでください」と答えた。結局、93歳まで出社し、辞めると申告した数日後に亡くなったという。

 若者の採用難で始めた高齢者雇用ではあったが、この高齢者雇用が、同社にとっては何にも替え難い財産になったことは間違いない。

<執筆>
アタックス研究員・坂本洋介

2017年3月1日フジサンケイビジネスアイ掲載

 
 

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アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


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