知恵の経営

第155回

変化への挑戦はチャンス

アタックスグループ 2018年4月2日
 
ある大手銀行系コンサルティング会社が主催する経営者向け講演会で、日本を代表する経営学者の伊丹敬之・国際大学学長の話を聞いた。

「バブル崩壊以降、日本経済の極めて深刻な問題の一つは投資の低迷で、その原因の一つはわが社を成長させたいという心理的エネルギーが企業とその経営者に足らないこと」と指摘した上で、「再び活力を取り戻すには少しの無理を多くの企業がする必要がある。無理が怖いという経営者にチャレンジスピリッツを持つことが成功につながるという原理を伝えたい」と語った。

伊丹学長は、20世紀を代表する経済学者J・M・ケインズの言葉に言及して、「長期的な投資に踏み切るにはアニマルスピリッツが必要である」と東京商工会議所が毎年表彰する「勇気ある経営大賞」の受賞企業を紹介していた。筆者も第1回受賞企業を取材し、一冊の本「変える勇気が会社を強くする」にまとめたことがある。受賞企業のうち、ダイワハイテックス(東京都板橋区)、生活の木(同渋谷区)、太新(同港区)、フットマーク(同墨田区)の経営者とはその後も定期的に会い、事業展開を確かめている。4社に共通しているのは環境変化に対して新商品の開発、海外展開など自らの事業を変化させ続けていることだ。

伊丹学長は経営戦略論の大家で、早くから成長する企業は、無理を承知で自社の持つ資源や能力を超えた事業に挑む「オーバーエクステンション」の状態を自ら作り出し、新たな事業展開にチャレンジすることで成長するという。代表例として川崎造船所のサラリーマン技術者から川崎製鉄の初代社長となった西山彌太郎の千葉製鉄所建設を挙げて説明した。

オーバーエクステンションを作り出し成功に導くには、経営者が3つの原理、(1)高い志(2)低い目線(3)不屈の実行力-を持つことだと熱く語った。

高い志とは単なる金もうけ発想ではなく、社会貢献を考えた高い目標のこと。京セラ創業者の稲盛和夫氏は通信事業への参入で悩んだ際、通信コストを大幅に下げ社会に貢献するという高い志で事業化を決断した。

低い目線とは戦略実行には組織全体を目配りし、現場をよく見ること。トヨタ自動車には現場を大事にする風土がある。ちなみに「チャレンジ・改善・現地現物」が「トヨタウェイ」であり組織全体に浸透している。

不屈の実行力とはやり抜く力。代表例は日本電産の創業者、永守重信氏の強烈なリーダーシップで成長し続ける「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」であると思う。

少子化、エネルギー革命、人工知能(AI)の普及など変化が常態化している経営環境だが、アニマルスピリッツで多少の無理をして、オーバーエクステンション状態を作り出し、変化にチャレンジする経営者にはチャンスの多い時代である。

<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・丸山弘昭

2018年4月2日フジサンケイビジネスアイ掲載
 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


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