知恵の経営

第181回

価格決定権を持ち、倒産リスクを軽減 「夢工場」の池クジラぶり

アタックスグループ 2018年12月11日
 
独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となり、高収益を獲得している企業を紹介している。今回は超短納期で、多品種単品のアルミ切削加工から装置開発まで行う、HILLTOP(ヒルトップ、京都府宇治市)の池クジラぶりを見ていきたい。

同社は1961年創業、80年に会社を設立、2014年には現社名に変更した。自動車の量産部品を孫請けする鉄工所に過ぎなかったが、下請けに疑問を感じた山本昌作副社長が「油にまみれるのではなく白衣を着て働く場所」「社員が誇りに思える夢の工場」を目指すと決め、アルミに特化した多品種少量単品、超短納期の試作開発、装置開発の事業に舵を切った。

山本副社長は量産もの・ルーチン作業はやらない、職人はつくらないと決め、すべて作業は定量化できると考えた。職人の技術もノウハウもデータベース(DB)化し、ルーチン作業は機械に任せ加工方法をDB化すれば、単品でもリピート受注が効率化できると考えた。そのために取り組んだのが「人・本社・つくるもの・つくり方・取引先」の5つを変えることだ。

まず人の面では、経験や勘に頼り、自分の技術を定量的・論理的に説明できない“にわか職人”を社内教育で徹底的に鍛え、その考え方を変えた。次に本社は中小企業こそ金をかけるべきという信念のもと、社員が誇りを持てる夢工場にした。

つくるものは多品種少量・単品に特化した。現在、受注全体の80%が製作数1、2個の多品種単品で月3000種類を生産している。また、つくり方も一般的な鉄工所は就業時間の8割が機械の前、2割がデスク仕事という中にあって、昼間人がデスクでプログラムをつくる一方、オリジナル生産システムによって機械が24時間無人稼働するため、割合は2対8と逆転している。ある製品では、800項目以上のデータ入力が必要なプログラムもあるが、自社開発ソフトによりたった25項目の入力で済ませている。このため納期は半分になった。こうした一連の生産工程改革で生まれた「ヒルトップシステム」が強みとなっている。

取引先に対して価格決定権を持ち、1社への依存率を30%以下に定めて分散することで倒産リスクを軽減している。この方針のもと毎年約100社の取引先が入れ替わるが、事業の新陳代謝と前向きに捉えている。この新陳代謝が新しいことへの挑戦の原動力でもある。

ヒルトップは表面処理を含むアルミ切削加工を受注後、新規受注で5日、リピート受注で3日以内に納品する超短納期の多品種単品、試作品の「池」を築いた。そしてその池クジラとなり、国内はもとより米航空宇宙局(NASA)、米ウォルト・ディズニー・カンパニー、ウーバー・テクノロジーズなど世界トップ企業をも顧客にするまでになっている。

<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明

2018年12月11日フジサンケイビジネスアイ掲載
 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


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