知恵の経営

第225回

創業は1805年 不易哲学守りつつ柔軟さも

アタックスグループ 2019年12月24日
 
東京都江東区にあるくず餅の製造販売を行なう船橋屋。創業は1805年(文化2年)で長い歴史を持つ。「くず餅ひと筋、真っすぐに」の理念の下、くず餅に特化。まじめに、正直に、時代にあわせ柔軟に変化・進化してきた。同社が関東風くず餅の老舗として200年を超えて成長発展してこれた一番の原因は、くず餅づくりの姿勢にある。「原材料」「水」「木」「無添加」「鮮度」「品質管理」という6つにこだわり、消費期限2日に対して、発酵熟成に450日間もの時間をかけてきた。この「江戸の粋」を大切にする姿勢があってこそ、ここまで、本物のくず餅を提供し続けてこれたのだ。

これら6つのこだわりの継続には、代々、不易の哲学が口伝えされてきたことも大きく作用している。「歴代当主とその時々の社員の汗の結晶が当社の今日をつくったのだから、謙虚な気持ちを忘れないでほしい」「今から後継者を誰にするか頭に留めなさい」「家族や当社を支えてくれている親戚、社員、取引先。とりわけ社員に対する気配りは忘れないこと」という3つである。さらに家訓も強く伝承されてきた。「売るより作れ」「浮利を追うな」である。その結果、ものづくり第一で浮利を追わず、正直に商いをしてくることができた。

一方で、2008年8代目当主に就任した現社長の渡辺雅司氏は、300年企業を目指して、時代に変化適応させてきた。当初は古参の職人たちから反発を受けることもあった。やがて社長が若手を集め会社の存在理由を見つめ直し、くず餅に関わる人たちを全て幸せにするというビジョンを示した。

また、現場のリーダーを投票で選出し、彼らに現場を任せた。この結果、理念に共感した社員たちが、自らの意思で動く「オーケストラ型組織」へと方向転換できたのだ。社員が当事者意識を持ち、創意工夫を積み重ねる、全員参加型経営の領域に到達した。

老舗ののれんにあぐらをかくことなく、近代的組織体制に挑戦してきた結果、19年現在、売上高20億円、社員数200人、店舗26カ所にまで成長することができた。一方、代々受け継がれてきた「とりわけ社員に対する気配りは忘れないこと」という思いは、変わることなく受け継がれている。この不易と変化適応の絶妙のバランスこそ、老舗の老舗たる由縁である。

創業以来くず餅に特化し、不易の哲学を守り通すと同時に、時代に合わせ柔軟に変化することで高い評価を得てきた。「本物のくず餅」を提供し、「くず餅といえば船橋屋」というブランドを築き上げている。

<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明
2019年12月24日フジサンケイビジネスアイ掲載

 
 

プロフィール

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