イノベーションズアイ BtoBビジネスメディア

知恵の経営

第226回

輸出で活路を見いだせ

アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)  執筆

 
経済センサス(2016年)によれば、近年の年間平均開業企業数は14万社、廃業企業数は27万社となっている。差し引きすると、年間13万社が減少している。より驚くのは、この間、好不況などいかなる環境変化にも企業は増加せず、右肩下がりに減少し続けていることだ。多くの企業において新たな時代が求める経営や、そのための価値創造ができなかったのが最大の要因だ。

時代は今や「右肩上がりの時代ではなく右肩下がりの時代」「ボーダーの時代ではなくボーダーレスの時代」「ローカルの時代ではなくグローバルの時代」「顕在需要の時代ではなく潜在需要の時代」「モノの時代ではなく心の時代」「単独の時代ではなく連携の時代」「勝ち負けの時代ではなく共生の時代」そして「業績重視の時代ではなく幸せ重視の時代」。

こうした変化の中で、新しい時代が求めていない、旧態依然とした経営活動を行っていたならば、次第に経営は行き詰まり、やがてじり貧どころか、哀れな幕切れをしてしまう。

こうした時代をたくましく生き抜く方策は多々あるが、その一つが、マーケットを広く世界に求める経営。あえて言えば、小さな世界企業・スモールジャイアントを目指す経営のこと。国内マーケットを見れば、人口減社会を迎え、既に多くのマーケットは飽和状態どころか、シュリンクしてきている。一方、海外に目を転じると、アジアの国々をはじめ世界の大半の国々の人口やマーケットは、程度の差こそあれ、右肩上がりに増加している。

その意味では、企業を成長発展したいと思うならば、あるいは、せめて現状維持をしたいと思うならば、好むと好まざるとにかかわらず、中小企業といえども海外に目を向けた経営をしていくのは当然だ。

中小企業の輸出は、日本経済の未来にとっても重要で、物的資源の乏しいわが国経済が、世界の国々と共生していくためには、バランスの取れた貿易が欠かせない。

とはいえ、これまでのような大企業に主導された大量生産・大量販売型の輸出や価格競争型の輸出は、年々困難になっていく。それは、他国企業との競合が必至の分野の輸出は、好むと好まざるとにかかわらず他国企業との軋轢(あつれき)を強くしてしまうからだ。

こうした軋轢を生まない輸出の方法は、貿易の主役の交代が効果的と思う。つまり、その主役を大企業から中小企業、価格競争型商品から非価格競争型商品にすること。つまり敵をつくらない・ケンカをしない輸出だ。

こうした中小企業が多数になれば「塵(ちり)も積もれば山となる…」ではないが、これまで、ほんの一握りの大企業が稼いでくれた輸出による外貨を、中小企業が担うことになる。

<執筆>
経営学者・元法政大学大学院教授 人を大切にする経営学会会長・坂本光司
2020年1月7日 フジサンケイビジネスアイ掲載

 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


Webサイト:アタックスグループ

知恵の経営

同じカテゴリのコラム

イノベーションズアイに掲載しませんか?

  • ビジネスパーソンが集まるSEO効果の高いメディアへの掲載
  • 商品・サービスが掲載できるbizDBでビジネスマッチング
  • 低価格で利用できるプレスリリース
  • 経済ジャーナリストによるインタビュー取材
  • 専門知識、ビジネス経験・考え方などのコラムを執筆

詳しくはこちら

お役立ちコンテンツ

  • 弁理士の著作権情報室

    弁理士の著作権情報室

    著作権など知的財産権の専門家である弁理士が、ビジネスや生活に役立つ、様々な著作権に関する情報をお伝えします。

  • 産学連携情報

    産学連携情報

    企業と大学の連携を推進する支援機関:一般社団法人産学連携推進協会が、産学連携に関する情報をお伝えします。

  • コンサルタント経営ノウハウ

    コンサルタント経営ノウハウ

    コーチ・コンサルタント起業して成功するノウハウのほか、テクニック、マインド、ナレッジなどを、3~5分間程度のTikTok動画でまとめています。

  • 補助金活用Q&A

    補助金活用Q&A

    ものづくり補助金、事業再構築補助金、IT導入補助金、小規模事業者持続化補助金及び事業承継・引継ぎ補助金に関する内容を前提として回答しています。

  • M&Aに関するQ&A

    M&Aに関するQ&A

    M&Aを専門とする株式会社M&Aコンサルティング(イノベーションズアイ支援機関)が、M&Aについての基本的な内容をQ&A形式でお答えします。

おすすめコンテンツ

商品・サービスのビジネスデータベース

bizDB

あなたのビジネスを「円滑にする・強化する・飛躍させる」商品・サービスが見つかるコンテンツ

新聞社が教える

プレスリリースの書き方

記者はどのような視点でプレスリリースに目を通し、新聞に掲載するまでに至るのでしょうか? 新聞社の目線で、プレスリリースの書き方をお教えします。