これまで、企業・個人の間での激しすぎる競争が繰り広げられてきた。競争が起こることは、企業・人が成長・発展していくためには必要なことは間違いない。自分の良いライバル・目標を見つけ、そこに追い付け追い越せと切磋琢磨(せっさたくま)することで、自分にも周りにもより良い状況がつくられていく。
ただ、現在はあまりにも競争を強いる社会になってしまっているような気がする。しかも今、行われている競争は企業・人を成長・発展させるためのものではなく、まさに言葉通りの競い争いによる勝者と敗者を決めるための競争になってしまっている。
企業間においては、多くの企業が仕事を得るためだけの価格競争に走り、利益が出ないことを承知で、他社よりも一円でも安く、少しでも安くと、限界を超えた競争を繰り広げる。結果、仮に仕事を取れたとして、この競争に勝者は存在するのであろうか。
仕事を取らないと、会社が回らないということは理解できるが、そんなことを続けていては、企業もそこで働く社員も体力的・精神的にすり減っていき、いつか限界を迎え倒れてしまうだろう。
また社員間においても、過度な競争が起こることで、仕事とは関係ないところでの足の引っ張り合いや誹謗(ひぼう)中傷合戦が起こり、本来期待していた競争とはかけ離れた人間関係の崩壊、社員間の信頼の崩壊といった問題が次々と発生し、社内の雰囲気は悪く、ギスギスとしたものになってしまうだろう。
ただ、競争をしなくてよいというわけではない。企業も人間も、ある程度の目標を持たせることは必要で、それがなく何をするのか、どこに行くのかも分からず、好き放題やっていては、うまく進むことも進まなくなる。これまでは、競争=ノルマ、競争=出世レースというように捉えすぎていた面があるように思う。これを今見直す必要があると思う。
現在は、コロナ禍の中で不安の多い先行きの見通せない時代がまだまだ続いていく。そんな中で、過度な競争を続けていくのではなく、より良い時代・方向に進むために「競争」ではなく「共創」「共走」という考えを持ち、ともに乗り越えていくことが求められているのではないだろうか。
アタックス研究員・坂本洋介
2021年1月13日フジサンケイビジネスアイ掲載