知恵の経営

第128回

視覚障害者の働く場つくる

アタックスグループ 2017年8月21日
 
全国には視覚障害のある人が約32万人いる。加えて言えば32万人の視覚障害者のうち、約7万人は身体障害や知的障害のある、いわゆる重複障害者である。

障害者の民間企業での就労は厳しいが、とりわけ視覚障害者の就労は厳しく、現在、民間企業で就労している視覚障害者は僅か1万7000人と視覚障害者全体の5%程度にすぎない。

こうした現状を見かねて、立ち上がった特定非営利活動法人(NPO法人)がある。浜松市東区にある「六星」だ。

創業は1996年、創業時は働く場を強く求めている6人の視覚障害者と4人の職員の計10人であったが、苦労と努力が実り、現在では「ウイズ半田」と「ウイズ蜆塚」という2カ所の拠点に、51人の視覚障害者と、12人の職員が就労する、わが国最大規模の視覚障害者就労施設にまで成長発展している。

主な事業は「白杖」「点字名刺」「点字広報誌」「ラベンダーのポプリの小物製品」「マグネットグッズ」「竹炭フクロウ」「手すきのハガキ」「布ぞうり」、そして「たわし」など十数種類の商品の生産・販売である。

より驚かされることは、これら商品は、いずれも視覚障害者と職員が、知恵を出し合い開発した自家商品ばかりである。

六星のリーダーは斯波千秋理事長だ。視覚障害者本人や家族との出会いの中で、「家から出ず・家から出られず・家から出してもらえず…」という生活実態を知りあえて立ち上がった。

数カ月前、社会人大学院生たち十数人で、六星の一つの拠点「ウイズ蜆塚」を訪問した。

そこでは二十数人の視覚障害のある人たちが、さまざまな仕事に取り組んでいたが、私たちをくぎ付けにしたのは、83歳の女性の仕事ぶりだった。

あの小さな針の穴に糸を通し、そして玉を作り、布ぞうりを縫い始めたのだ。親指のあちこちに血がにじんでいたが「お金を払ってもいいから、ここで働き続けたい…」とニコニコ顔で私たちに語ってくれたとき、筆者らは目頭を熱くした。

聞くと73歳で視力を失い、自宅に閉じ籠もり、独り暮らしをしていたが、斯波理事長たちの懸命なリハビリ訓練で、再び勇気と希望を取り戻し、1日3時間働いているという。

その日はそこで生産されている商品を可能な限り買って帰るしか、できることはなかった。

ともあれ、こうした頑張る法人の存在を見せつけられると、問題は外などと嘆き悲しむ中小企業に一段の奮起を求めたい。

<執筆>
法政大学大学院政策創造研究科教授 アタックスグループ顧問・坂本光司

2017年8月21日フジサンケイビジネスアイ掲載
 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


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