知恵の経営

第240回

パンの缶詰で食糧支援

アタックスグループ 2020年4月14日
 
今回は、栃木県那須塩原市で、パンの缶詰の製造販売を行うパン・アキモトを紹介する。もともと「まちのパン屋さん」だったが、1995年1月に発生した阪神淡路大震災直後、被災者救援のためトラックで焼きたてパン約2000食を運んだことをきっかけに、パンの長期保存ニーズがあることに気づき、缶詰開発を始めた。実に1年半の期間を要して完成した商品は、最長3年間の賞味期限という、長期保存性とおいしさを兼ね備えるものとなった。

パンの缶詰が完成したものの、次の課題は認知度向上だった。開発当初「カンカンブレッド」と名付けて発売したが、全く反響がなく、3年くらいはほとんど売れず、面白グッズ的な扱いしかされなかった。それでも、パンの缶詰は日常的な食品ではなく、非日常的な食品であると考え、信念を貫いた。そこで、「防災の日」の記念イベントに参加したり、自治体にプレゼントしたり、災害備蓄食として、その存在を知ってもらうことに努めた。

そんな中で、認知度向上につながったのが、2004年10月に発生した新潟県中越地震である。納入先の企業・自治体から義援物資として送られたパンの缶詰が多くのニュースで報道された。さらに学校給食でもパンの缶詰が出され、災害現場に調査に入った専門家にもパンの缶詰が配られた。これを契機に一気に知名度が上がり、災害備蓄用として多くの注文が入るようになった。現在では、日本をはじめアメリカ・中国・台湾の4カ国・地域で特許を取得し、選べる種類も13に増えた。結果、日本全国およそ250社を超す企業・自治体が備蓄食として大量購入してくれている。今現在、パンの缶詰は、売り上げの7割を占めるに至っている。

このように、長期保存性から社会課題を解決する存在になったが、賞味期限は避けられない。ある自治体から「賞味期限が切れるから新しい物を買いたいが、古い物を処分してほしい」との連絡が入ってきた。ところが、一方で、スマトラ沖地震で津波被害を受けたスリランカからは「古くてもいいからパンの缶詰が欲しい」という依頼が入った。秋元義彦社長は、廃棄する前に缶詰を引き取り、食べ物に困る海外に送ろうと考え、09年、「救缶鳥プロジェクト」を立ち上げた。

こうして、企業・自治体が備蓄した缶詰を、新しい缶詰を再購入することを前提に賞味期限を1年残した状態で回収し、その缶詰を、食べ物に困る海外に届ける仕組みが構築された。これまでに、国内の被災地に約15万食以上、海外の数十カ国に約80万食以上を送り届けている。被災地で苦しむ被災者の思いに応え続けることで高い評価を得ている。


<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明

2020年4月14日フジサンケイビジネスアイ掲載
 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


HP:アタックスグループ

このコラムをもっと読む 知恵の経営

同じカテゴリのコラム

キーワードからコラムを検索する