知恵の経営

第212回

供給者の思いと購入者の思い

アタックスグループ 2019年9月17日
 
「佰食屋(ひゃくしょくや)」というお店をご存じだろうか。京都の国産牛ステーキ専門店で、1日100食限定で、100食売り切れた時点で営業終了となるため、分かりやすくそれを店名としている。しかも驚くのは、午前11時から午後2時半とわずか3時間半の営業時間のみで売り切り、夜の営業は一切していない点だ。

代表の中村朱美氏は、お客がどんなに求めても、100食以上つくることができても、それをしない。そこには、「食の安全がささやかれる時代に、安心、安全でおいしいものを皆さまに提供したい。誰でも食べに行ける値段にもこだわりたい。そんな思いを形にしたのが、佰食屋。新鮮なものを食べてほしいから、当店には冷凍庫がありません。毎日100人分の食材を仕入れ、100人に提供する。そうすることで、新鮮で作りたてのおいしい料理を提供することができる」という思いが込められている。今では、人気が人気を呼び、全国からその味を求めてやって来るという。

また東京・吉祥寺にある「小ざさ」が売る1日150本限定のようかんも「幻の羊羹(ようかん)」と言われる。なぜ150本かといえば、品質を保つ限界量が150本だからだ。社長の稲垣篤子氏は、「小豆を一窯に3升使って、約50本のようかんができる。それを毎日3窯分作るので1日150本。先代から小豆は3升以上炊くと、この味はできないといわれ、自身もあらゆる研究を繰り返し、3升が一番いいと確信した。だから守り続けなければいけない」という思いで40年以上、早朝から長蛇の行列が途切れない光景が続く。

1日に販売する本数は150本だが、1人で購入できるのは3本までのため、購入できるのが50人程度となる。以前は1人5本まで購入可能だったが、現在は1人3本までとなった。一人でも多くのお客の手に渡るようにとの思いがあったからだ。

この他にも、スープが無くなり次第、営業終了するラーメン屋なども、これらの例と同様のケースとして取り上げられる。

ただ、こういった場合、一般的に起こるのが、供給側と購入側の思いの違いだ。供給側はおいしいものを本当においしい状態で提供したいという思いが、また購入側は何時間も行列に並んだのに…。食べたい・買いたい客に商品を提供しないのは店の横暴だ。といった争い・言い合いになることがある。しかし、今回事例で紹介した2社とも、毎日、一瞬の妥協もせずに「本物」の味を作り、保ち続けている姿勢に、お客も理解し、支持していることで、愛される会社となったのだ。供給側の思いが届くのには時間はかかるが、それを本当に求める購入者には間違いなく届くはずだ。その信念を貫けるか、そこに大きな差が生まれることは間違いないだろう。

<執筆>
アタックス研究員・坂本洋介
2019年9月17日フジサンケイビジネスアイ掲載
 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


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