知恵の経営

第180回

高齢社会の行く末 

アタックスグループ 2018年12月4日
 
普段テレビをあまり見ることはないが、たまたまNHKで放送されていた「人生100年時代を生きる 第1回『終の住処はどこに』」という番組を見て、直接、知恵の経営につながらないかもしれないが、考えることがあった。

見た方も多いだろうが、番組は「終の住処」について、高齢者を受け入れる各種施設の不足が懸念される中、切り札として登場した、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)について紹介していた。

比較的安価で手厚い介護が受けられる特別養護老人ホームの待機者が30万人を超えるなか、サ高住は施設の担い手を官から民へと転換しようとする国が切り札として、7年前に導入した。民間事業者が運営し、60歳以上の高齢者や要介護者・要支援者、その同居者であれば基本的に入居可能。さらに居住スペースは原則、床面積25平方メートル以上で、バリアフリーが基本となっている。

国は当初、程度の軽い要介護者の受け皿にしようと考えたようだが、施設運営者にその思いが伝わっていない現状が語られていた。

施設運営者の主な収益は初期入居費用と定期賃貸収入、入居者に対する介護報酬で、初期入居費用と賃貸料は簡単に値上げできない。半面、介護報酬は要介護度が高くなるにつれて高くなる。つまり、要介護度の高い高齢者をどれだけ受け入れるかが施設運営に関わってくる。

国が考えるように、要介護度の低い高齢者だけを受け入れていては、その運営は成り立たなくなる。要介護度の低い入居者でも、自身で行動でき知らぬ間に施設から出て徘徊(はいかい)する認知症患者が少なくない。対応に追われる職員の負担も大きくなっている。

施設に空きがあるのに受け入れを拒否するケースや、病院から退院せざるを得なくなった要介護度の高い高齢者を紹介してもらう施設、要介護度の高い高齢者が入居するまでの穴埋めとして要介護度の低い高齢者を入居させ、入居が決まると退去させる事例が紹介された。

施設の経営・運営面や職員にかかる負担を考えれば、全てが悪いこと、間違っていることとはいえない部分も正直ある。

ただ、少なくとも高齢者や社会的弱者を受け入れる側が損得だけを考えた行動に走る姿には正直不安しか感じなかった。

新たなスタイルを模索する事例もないわけではない。サ高住ではないが、先日訪問したある社会福祉法人は健常者向けのマンションを用意し、その後、各種の症状が出始めると、認知症専門や医療依存度が高い人向けなど、状態に合わせて最適なフロアに移動して住み続けられる仕組みが構築されていた。

誰もが年を取り、望まなくとも介護を必要とするときは確実にやってくる。そのときに備え、介護する側・される側も高齢社会をどう生きていくか、真剣に考えるときがきている。

<執筆>
アタックス研究員・坂本洋介

2018年12月4日フジサンケイビジネスアイ掲載
 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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