政府は労働力人口が減少し続ける中で、長時間労働・残業など悪しき慣習が経済の足を引っ張り生産性低下の原因になっていると考え、働き方改革に積極的な動きを見せている。
現内閣で働き方改革担当相のポストが新設されたことからも、政府の本気度をうかがうことができる。その具体的な実行計画を取りまとめるため、政府は働き方改革実現会議を開催し、(1)長時間労働の是正(2)同一労働同一賃金の実現(3)高齢者の就労促進(4)障害者やがん患者の労働環境整備-などについて検討を進めている。
その影響なのか、外食産業や小売業などで、年中無休や24時間営業を見直す報道を良く見聞きするようになった。
外食をはじめとするサービス業の人手不足という要因ももちろんある。人員を増やすには、企業はこれまで以上に高い賃金を支払わざるを得なくなり、深夜営業をしたところでコストが増え、採算は取れなくなる。
企業側が「ランチタイムやディナータイムの時間帯に安定したサービスと商品を提供し、社員の働く環境もよくしていくため」と効率を考え、従来の労働環境を見直し、働き方改革に同調するのもうなずける話だ。
一方、地方ではまだこの流れが進んでいないのも事実だ。それは、24時間営業の飲食店や小売店が深夜の安全・防犯の拠点になっているからだ。
しかし、街の安全のために深夜営業を続けてほしいというのは、かなり無理がある話だ。地域住民が「営業してくれることで治安が守られているのだから、深夜営業をする企業の光熱費や人件費を負担します」というなら話は別だが、それもせずに24時間営業を続けろというのは、さすがに無責任に感じてしまう。
今回の働き方改革で考えるべきは、これまでの24時間営業は「提供していた企業の過酷な労働環境によって生み出されたものかもしれない」という提供側の目線を持つことだ。
24時間営業がなくなれば、不便になるかもしれない。しかし、飲食店や小売店はもともと24時間営業だったわけではない。コンビニの「セブン-イレブン」も、営業時間が朝7時から夜の11時までだったことが名前の由来になっていることからも、それがわかる。
時代の流れや生活習慣の変化が、24時間営業を生んだのは間違いない。また、24時間営業をしてくれることで、得られるメリットがあったことも事実である。
そのメリットを享受する裏側では、常に24時間営業に悩まされている提供者がいることを忘れてはならない。この機会に、24時間営業は当たり前ではないということを改めて考えるべきではないだろうか。
<執筆>
アタックス研究員・坂本洋介
2017年5月29日フジサンケイビジネスアイ掲載