知恵の経営

第219回

アジアの経営者に思う

アタックスグループ 2019年11月12日
 
数年前からであるが、毎月のようにアジアの国々の経営者が、私たちの唱える業績や勝ち負けではなく「人を大切にする経営学」を学びにわざわざ来日する。その国・地域は、タイ・台湾・ベトナムなどもあるが、とりわけ多い国は中国の経営者である。来日の目的は「5方良しの経営」「人を大切にする経営」を理論と実務の両面から学ぶためである。

このため、半日から1日は私たちからの講義。その後、1日から2日かけ「5方良しの経営」を実践している中小企業を訪問研究するのである。来日するきっかけは、筆者らの書いた本が、中国語などで翻訳されていることもあるが、最大の要因は、一度来日し勉強をした方々が、国に帰り、いろいろな場面で学んだことを話す。その話を聞いた方がまた別の人にといった、まさに口コミである。

講義資料は、例えば中国人の場合は、同時通訳に近いほどの文章を記載したパワーポイントで講義することもあり、講義を聴く受講者の必死になってメモを取る姿、真剣な聞く態度には驚かされる。

同じような講義をしても、「何しに来たのだろうか」と疑いたくなるほど、ひどい受講者が少なからずいる日本における講演会とは、残念ながら随分違う。そればかりか、講義終了後の感想文や質問の内容やレベルなどを見ても、「日本の誠実な経営者が書いたのではないか」と、見間違えるようなものばかりである。

いつぞや、参加者の方々に、「なぜ大企業ではなく『中小企業』、なぜ効果・効率や生産性を高めるための経営学ではなく『人本経営学』を学びに来るのですか」と、質問をしたことがある。その時の衝撃的な回答は今でも鮮明に覚えている。

「もはや、日本の大企業から学ぶことはほとんどありません。大企業で学んだことを導入すれば、かつては一定の効果がありましたが、近年は導入すればするほど会社がギクシャクしてしまう。加えて言えば、業績や勝ち負けを重視するあまり、最も大切な人がそのための手段となってしまい、多くの社員を心身共に疲弊させてしまいました。こうした中、5方良しの経営学、人本経営学、社員とその家族第一主義経営、という考え方を知りました。私たち中国の経営者が真剣に学ぶべきは、日本の有名大企業の経営ではなく、人を大切にする中小企業が実践している経営学です」と言い切ったのである。

こうした真剣に良い企業になろうと真剣に学ぶ中国をはじめ、アジアの経営者の姿勢を見ると、日本の未来が心配でならない。

<執筆>経営学者・元法政大学大学院教授 人を大切にする経営学会会長・坂本光司
2019年11月12日フジサンケイビジネスアイ掲載
 
 

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アタックスグループ

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