知恵の経営

第183回

京セラの全員参加経営に学ぶ

アタックスグループ 2019年1月15日
 
存命の名経営者として必ず名前が挙がるのは京セラ創業者の稲盛和夫氏だろう。師と仰ぐ経営者は大変多く、筆者もその一人だ。最近、京セラで稲盛氏の秘書を務めた大田嘉仁氏が書いた『JALの奇跡』が出版された。大田氏は、JALで稲盛会長就任時に意識改革担当となった。この本で改めて思い知らされたのは稲盛氏の経営者としての人物の大きさであり、京セラを創業し一流企業に育て上げる過程で創り上げた全員参加経営の仕組みだ。稲盛氏が、JAL再生に持ち込んだのは、京セラで実践してきた経営管理手法である。

一つは「京セラフィロソフィ」といわれる意識改革で「何のために会社を経営するのか」という社員全員のベクトルを合わせる経営哲学、もう一つは「アメーバ(小集団)経営」といわれる正しい数字に基づいて経営を行う管理会計制度だ。

京セラフィロソフィは、稲盛氏が27歳で京セラを創業し、悪戦苦闘する中で、ぶれない軸、判断基準として作り出した。

自らの経営の原点として経営12カ条を制定し、その第1条は「事業の目的・意義を明確にする」、第2条は「具体的な目標を立てる」、第3条は「強烈な願望を抱く」である。

JALでは約50人の経営幹部に、稲盛氏自身も講師となりフィロソフィの勉強会を開き、意識改革を成功させた。勉強会がスタートした半年後には「JALフィロソフィ」が作られ、全社員への教育も継続的に行われている。

一方、アメーバ経営は、全員参加型経営を確立するための手法だ。稲盛氏は会社が大きくなるにつれ多忙を極め、製品開発、製造、販売と常に自らがトップとして仕事をしなければならず、限界に達する。

そんなときに分身として仕事をしてくれる仲間を強く求め、考えついたのがアメーバである。

大きくなり過ぎた会社の組織を管理可能なアメーバに分割し、そのリーダーに仕事の責任者となってもらう。大きな組織のリーダーになると人並みの力量では管理できなくとも10人程度であればリーダーの職責を担える人物は多く存在する。

京セラでは毎月各アメーバの採算計算表を作成し、前月の実績で1時間当たりいくらの付加価値を生み出したかを示すことで、努力を促す。

JALにもアメーバ経営が導入され、正しい数字を基に経営を行うことが実践されている。

日本は先進諸国の中で人口減少社会にいち早く突入した。歯止めを掛けることは極めて困難と言わざるを得ない。多くの中小企業は資金難よりも人材難で経営が難しくなる時代だ。

こんなときこそ稲盛氏が50年の経験から築き上げた、フィロソフィとアメーバシステムを基にかじを取る全社員参加型経営に学ぶことは、経営の王道ではないかと強く思う。

<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・丸山弘昭

2019年1月15日フジサンケイビジネスアイ掲載

 
 

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顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


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