知恵の経営

第179回

業績拡大の信金にみる「池クジラぶり」 よろず相談で差し出る経営実践

アタックスグループ 2018年11月26日
 
独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となり、高収益を獲得・維持している企業を紹介している。今回は、但陽信用金庫(兵庫県加古川市)の池クジラぶりを見ていきたい。

同信金は1926年6月10日に創業した。現在34店舗と81カ所の店外ATM(出張所)を保有し、2017年度末の預金残高は7323億円となっている。

桑田純一郎理事長が1990年3月に就任した直後と現状を比較すると、預金は1870億円から7323億円と3.92倍に、貸出金も1453億円から2861億円と1.97倍に増加。店舗・出張所数は22店舗から34店舗に、学費振り込みのために設置した出張所も6カ所から81カ所へと成長した。

桑田理事長が就任した頃は、金融自由化のなかで、「これからは運用の時代」と言われていた。1000万円以上の預金は、情報量の多い巨大金融機関に集まり運用される。

同信金の身の丈からすれば、同じ土俵では戦えない。そこで財布代わりの金融機関として1000万円以下の預金が自然と集まるようにと考えた。

学費の引き落とし手数料をタダにして、学校の指定金融機関に徹した。これが大成功し、預金量は大幅に伸びた。また、集めた資金の運用先は、個人と中小零細企業と決めた。こうした運用先のメインバンクとなり小口融資に徹すれば、リスクを分散できるからだ。

そこで気軽に何でも相談できる地元の「よろず相談信用金庫」をコンセプトにした。
同信金には、不動産業、弁護士、税理士など、全ての業種の顧客がいるわけで、金融のことはもちろん、個人の退職金や子供の教育費から、法人経営、起業、事業承継といった多岐にわたる相談に乗ることができる。こうした「さしでる経営」を実践してきた。

桑田理事長は、もともと山林業の家系。山林は植えて40年たたないとお金にならない。人のため、社会のために何をすべきかを考えていれば、利益は後からついてくる。

社員第一主義を掲げ、全社員を家族(ファミリー)と捉える。それは不況のなかで生き残るには規模拡大の追求ではなく、家族のような「絆・信頼」を築くことが一番大切だと考え、そのために多くの施策を採用している。

代表的なものとして、14日間の新入社員研修とその後の全寮制がある。ここには理事長自らが深く関わり、新入社員たちと徹底交流しているのだ。

同信金は全社員一丸となって巨大な家族となり、地元目線のサービスや商品を提供して、顧客満足度を高めてきた。

気軽に何でも相談できる地元の「よろず相談信用金庫」という池を築き、その巨大なクジラとなっている。

<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明

2018年11月26日フジサンケイビジネスアイ掲載
 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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