知恵の経営

第205回

事業の再定義で変化に適応

アタックスグループ 2019年7月23日
 
企業の目的は「顧客の創造である」。これは「経営の神様」とされる世界的な経営学者、ピーター・ドラッカーの言葉だ。変化する経営環境に敏感に適応し、顧客を創造し続けることのできる会社でなければ存続は難しい。

環境変化に適応し、事業を存続させるためには、経営者が自らの事業をどう捉えるかが極めて重要であると言ったのは経済学者のセオドア・レビットである。レビットは米ハーバード大学でマーケティングを教えていたが、「会社はどうすればその成長を持続できるのか」「会社が自らの事業を正しく定義しないと成長企業といえども衰退する」という趣旨の、非常に示唆に富んだ論文を発表した。レビットが事例として挙げた鉄道会社の衰退の話を紹介しよう。

かつてアメリカでは、主要な交通手段として北米大陸全体に鉄道網が敷設され、鉄道会社は大変繁栄した。しかし現在ではその地位を自動車、航空機に奪われてしまい、鉄道会社は衰退してしまった。レビットはその原因を技術革新による自動車や航空機、鉄道の出現に求めるのは間違っていると言う。

真の原因は、鉄道会社が自社の事業を鉄道を動かす事業と捉えて、自動車・航空機といった鉄道以外の手段で顧客の需要を満たすことを放棄したからである。正しくは、鉄道会社の経営者は、自社の事業を輸送事業と考えるべきであったと言う。自動車、航空機の出現は自らの輸送事業をさらに発展させ、顧客の支持を獲得する好機であったのに、経営者はそれを見逃してしまったのである。

このように自社の事業を定義するとは、事業領域(ドメイン)を決めることであり、経営戦略上極めて重要である。経営環境の変化に伴い事業ドメインを変化させていく必要があり、事業ドメインに関する合意を社員と顧客に得られていることが重要である。ドメインの定義は言わば自社が相撲を取る土俵を決めることであり、土俵を間違えると勝負にならない。現在、AI(人工知能)革命・少子高齢化・地球環境保護といった時代の変化で、従来の事業の存続が難しいと考えている経営者は多い。

日本経営の神様とされる松下幸之助翁が語っていた「衆知経営」を実践し、自社の将来を担う若手社員を集め「わが社の事業を今後どのように定義したら成長できるのか」、平易な言葉で言えば「わが社は何屋さんか」と検討することを提案したい。なお、検討する際の着眼点は、自社の製品ではなく、顧客の求める価値に焦点を合わせることも付言したい。

<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・丸山弘昭
2019年7月23日フジサンケイビジネスアイ掲載
 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


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