知恵の経営

第169回

「社会性」と「収益性」の両立

アタックスグループ 2018年8月28日
 
創業経営者との対談式セミナーで対話したリネットジャパングループを紹介したい。

黒田武志社長は1989年、トヨタ自動車に入社。新規事業立ち上げに抜擢(ばってき)されて面白さを知り、起業を志す。偶然ブックオフを創業した坂本孝氏が起業家を支援する企画の記事を読み、すぐブックオフ本社を訪問。坂本氏の起業家のオーラに感銘し、各地の講演を最前列で聞き、実際に働きたくなって、三重県四日市市のブックオフ店舗でアルバイトを始めた。

10カ月ほど過ぎたころ坂本氏から突然、食事の誘いを受け「四日市の店をのれん分けしてあげる」とチャンスをもらう。黒田社長は当時32歳。トヨタを退職して新会社を設立。ブックオフ起業家支援制度の第1号としてアルバイトから社長になる。2年半で7店舗を経営するまで発展したが、飽き足らず注目していたインターネットによる、ブックオフの中古本ビジネスを考えた。

2000年ごろには米アマゾンがネット書店としてブレークしており、黒田社長は中古本の日本版アマゾン立ち上げを決断した。店舗ビジネスは本部に譲渡し、古巣のトヨタとブックオフの出資も得て、新たにネットビジネスを起業。大変な苦労を強いられるが「ネットオフ事業」は12年、世界ナンバーワン中古書店としてギネス記録に認定された。ついに16年12月、東証マザーズに上場した。

現在の事業は、(1)中古本をネット売買するネットリユース事業(2)小型家電から希少資源を回収する都市鉱山リサイクル事業(3)カンボジアでの中古車リース事業や貧困者に金融支援を行うマイクロファイナンス事業、中古車を整備できる人材を育てて日本に技能実習生として送り出す事業-である。

同社は、中古本のネットリユースの強みである、宅配便を活用した買い取りノウハウを駆使して小型家電リサイクルに進出。このとき、宅配買い取りから世界を変える、というビジョンを社内外へ宣言した。都市鉱山リサイクルでは、鉱物資源を取り出すために知的障害者の雇用創造にも貢献し、極めて社会性の高い事業にしている。

さらに、回収した中古の農機具や自動車の輸出先にカンボジアを選び、事業を始めたところ、購入資金のない人が多く、リースに変わり、さらにマイクロファイナンスにも展開した。

黒田社長は、新規事業の立ち上げでは常に強みを生かし、自ら積極的に行動し、他人の協力を得ながら、課題を一つ一つクリアしている。

成功するために黒田社長はまず、「事業には大義が必要」という。世の中に役立つ「社会性」とその中から「収益性」を獲得する戦略が存在する。

2つ目に「高い目標を掲げる」こと。苦難のとき「ビジネスを通じて『偉大な作品』を創る」という経営理念を発表し、社員を鼓舞し続けている。

3つ目は目標に向かって「懸命に努力する」こと。一生懸命さが周囲に伝わり応援を受けられる。そして、「人との出会いを大切にする」ことの大切さも、繰り返し語っていた。

<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・丸山弘昭

2018年8月27日フジサンケイビジネスアイ掲載
 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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