知恵の経営

第222回

トップの進退決断理由

アタックスグループ 2019年12月3日
 
先日、ジャパネットたかたの創業者で、現在、サッカーJリーグ2部V・ファーレン長崎の高田明社長が、来年1月に社長を退任するという報道があった。

高田氏は2017年4月に当時、前年度決算で1億円の赤字を抱えるなど経営難に陥っていたクラブの再建を担い、就任1年目で初のJ1昇格を果たしている。当時、まったく異なる分野への挑戦に、「自分がずっと子供たちの夢を応援してきましたので、長崎からこのクラブがなくなるのは大変なことだ」「ビジネスとスポーツは、業界は違えど目指すミッションに変わりはない。スポーツは皆さんに幸せを与えていく。それは商売も商品も同じなんですよ。それをブレずに持ち続ければ社長を承ってもどうにかしていけると感じた」と話していた。

実際、高田氏は多くの改革を行っていった。まず、選手に対して「給料のことや、将来どうなるかといった不安があると思うが、それはわれわれがしっかりと受け止めるので、とにかく練習・試合に集中してほしい」と伝えた。さらに言葉だけではなく、選手やスタッフを自宅のパーティーに招き、J1昇格を決めた年末はハワイ旅行をプレゼントすることなども行った。これにより、選手の不安を取り払い、試合に集中できる環境、現場とフロントの信頼関係が構築された。

さらに、「1回スタジアムに来たら2回、3回と来たくなるようなサプライズをやっていきたい」と、常にスタジアムに足を運び、今後どんなスタジアムにしていけばいいのか。どんなファンサービスをすればよいかを「現場」に出向いて「現物」に直接触れ、「現実」をとらえる三現主義の観点から考えていた。

その中で、就任当初、ジャパネットたかた出身ということもあり、新品だが箱に傷がある商品などを集め、スタジアムでアウトレットセールを実施するなどの集客イベントも行い、ファンがやってくる仕組みも次々に構築していった。

これら数々の取り組みで、約2年半で累積赤字を解消させた高田氏は、社長を退任する理由を「就任したときから3年のスパンで考えていました。経営体制もめどがつき始めた。退任の適正な時期で、後は後進に任せたい」と話した。

さらに、会見の中で話した次の言葉は、全ての企業・経営者が抱える承継に関して大きな参考となるものである。「結局ですね、企業を創業するとか、ないところから作り出すとか、再建するとか、(その局面に)向いた人がなるべきなんですよ。起業に向いた人が再建したから成長する、というわけではない。経営というものは違うんですよ。創業期、成長期、安定期と状況によって、トップは変わっていかないといけない。年齢的にも。そこも含めて社長退任の適正な時期であると考えた。自分の経験からも。それだけです」

<執筆>
アタックス研究員・坂本洋介
2019年12月3日フジサンケイビジネスアイ掲載
 
 

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