知恵の経営

第178回

事業承継に3つの質問

アタックスグループ 2018年11月20日
 
中小企業を悩ます事業承継の困難さは、おおむね現経営者に2つの心配があるからだ。一つは今の事業構造では存続が難しいこと、もう一つは後継者が不在か、能力の不足だ。筆者は事業承継に悩む60代後半から70代の経営者と同世代で、最近特に相談が多い。基本スタンスは会社の実情を徹底的に聞き、質問を繰り返して経営者の考えを整理し、決断を助けることだ。決断したら事業承継計画を策定し、実行を支援する。

相談を受けると、必ず問い掛ける質問が3つある。

第1は継がせるべき事業かどうか。現在は第4次産業革命で、ネットビジネスや自動運転車など産業全体が100年に一度の変革期といわれる。現にトヨタ自動車をはじめ主要な自動車メーカーは、今後はモビリティサービス(MaaS)を提供する会社に変化するという。継がせるべき事業にするには変化する環境に合わせて企業を変えなければならない。

第2は後継者はいるのか。創業者は自己成長に合わせて事業を拡大し、経営手腕を磨きながら発展させたが、後継者は実力以上の事業を引き継ぎ、多くが大変なプレッシャーを感じる。「この子ならやれる」と思うのなら、なるべく早く計画的に後継者を教育し、経営者人生の準備をさせることがベストだ。理想は「賢くたくましく育てる」で、早めに経営を任せ、失敗も含めて経験を積ませることだ。

株の格言に「もうはまだなり。まだはもうなり」とがあるが、事業承継では「まだはもうなり」だろう。

第3は会社は承継できる状態になっているか。継がせたい将来性のある事業でも、環境が整わなければ承継は難しい。

事業承継は、自社株を上手に渡す相続対策だけではない。経営自体をバトンタッチできるかがより重要になる。リーダーを支える幹部社員の育成、業績や予算の管理・人事制度などリーダーシップを発揮しやすい経営の仕組みづくりが大切だ。

最近2人の経営者から事業承継の相談を受けた。いずれも後継者が存在する。一社は外部のコンサルティング会社の応援を得て、後継者を中心とする若手中心のプロジェクトを立ち上げ、ミッションの見直し、どう事業を変化させるかというビジョンづくりを始めている。

もう一社は同様に後継者を中心とした開発、製造、営業、管理などの各機能部門から選出された若手中心のプロジェクトを立ち上げ、具体的に中期経営計画の策定に着手した。いずれのケースも経営者はプロジェクトに参加するメンバーが、プロジェクトを通じて経営人材として成長することを願っている。事業承継の成功の鍵(KFS)は、後継者と後継者を支える幹部の育成である。

<執筆>アタックスグループ主席コンサルタント・丸山弘昭
2018年11月19日フジサンケイビジネスアイ掲載
 
 

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アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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