知恵の経営

第206回

創意工夫で通年生産を実現

アタックスグループ 2019年7月30日
 
新潟市で家庭用石油ファンヒーターなどの製造・販売を行うダイニチ工業は、1957年に創業者の佐々木文雄氏が新潟県三条市で設立したのが始まりだ。2018年には、家庭用石油ファンヒーター市場で、累計生産台数3000万台を達成した。また販売台数シェアでは11年連続業界トップ、市場シェア50%以上と、圧倒的な地位を確立している。

家庭用ファンヒーター市場に参入したのは1980年。既に三菱電機や日立製作所など大手電機メーカーが手掛けていた。後発ではあったが、それまでに製造されていた製品の問題点を解決し、「着火が早い」「ニオイが少ない」と高く評価された。しかし90年代に入るとエアコンが普及。石油ファンヒーターは時代遅れとみられるようになり、急速に業績を悪化させ、98年には創業初年度以来の赤字に転落した。

そんな時期に社長に就任し、厳しいかじ取りを託されたのが現社長の吉井久夫氏である。うずたかく積み上げられた40万台以上の在庫の山に驚いた。つくった半分も売れていなかったからだ。ちなみに、2000年代に入ると、業界各社は次々と撤退し、かつて13社あった石油ファンヒーター・メーカーは、今では4社に集約されている。在庫処分を決断し、1万5000円から1万円に値を下げて販売することにしたところ、在庫を全て売り切ることができた。これにより、石油ファンヒーターが時代遅れになったのではなく、1万円なら買ってくれる人はまだまだいることに気づいた。

そこで、衰退産業の中で、研究開発に全社員の2割を投入し、次々と差別化された新製品を市場に投入することにより、お客さまの心をしっかりと捉えることとし、あえて増産に踏み切ったのだ。

また3月から8月までにいかに精度の高い販売計画を作るかに挑戦した。計画変更を恐れる営業担当者に計画変更を奨励して勇気付け、正社員による通年生産に切り替え「平準化生産」に取り組んだ。生産計画の7~8割の売れ筋製品は、シーズン前の夏までに生産し、在庫に積み上げておくことにした。

また、繁忙期の10月から12月に関しては、倉庫の在庫が足りないときでも、注文を受けてからわずか4時間で製品を生産し出荷できる「ハイドーゾ(はいどうぞ)生産方式」という仕組みを考案した。これにより、生産計画の残り2~3割は、市場の動向を注視しながら製造することが可能になった。売れる機種や売れない色など、臨機応変に組み替えることにしたのだ。

ちなみに、こうした通年生産への切り替えは、主要取引先の協力会社にも年間で安定して仕事を供給したいという思いからでもあった。

<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明
2019年7月30日フジサンケイビジネスアイ掲載
 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


HP:アタックスグループ

このコラムをもっと読む 知恵の経営

同じカテゴリのコラム

キーワードからコラムを検索する