知恵の経営

第269回

ビジネスにおける「キラーパス」は何かを考える

アタックスグループ 2020年9月15日
 
『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)の書籍を参考に、戦略ストーリーには、事業コンセプトに続いて、戦略ストーリーの優劣を決める「クリティカル・コア」が重要であるということを伝えたい。(アタックスグループ主席コンサルタント・丸山弘昭)


著者の楠木建一橋大教授は書籍の中で「サッカーに例えればゴール(長期利益)へのシュート(競争優位)に向けてさまざまなパス(構成要素)を繰り出すが、その中でも『キラーパス』となるのがクリティカル・コアです」と説いている。


クリティカル・コアは「戦略ストーリーの一貫性の基盤となり、持続的な競争優位の源泉となる中核的な構成要素」と定義され、他のさまざまな構成要素と深いつながりを持ち「一石何鳥にもなる」打ち手である。また、「一見して非合理に見える」がストーリー全体の中に位置付ければ、強力な合理性の源泉になるものである。この2つの条件が満たされなければならない。


ところで筆者は、キラーパスの説明でなるほどと納得していることは、「一見して非合理に見える」という条件だ。スターバックスが事業を急拡大させるためには、一見すると外部の力を借りるフランチャイズ方式の方に分があるように見えるが創業者があくまでも直営方式にこだわったことが成功につながった。


筆者は仕事柄、優れた経営者との出合いに恵まれているが「一見して非合理に見える」戦略で事業を伸ばした経営者の話を聞くことも多い。筆者の知人に、もやしの生産で大きく事業展開させた経営者がいる。この経営者は仏教系の大学を卒業したこともあり、世の中のお役に立つ人生を真剣に考えていた。もやしの生産にお役立ちを当てはめると食べて体のためになることであるという考えに至った。「食べて体のためになる発想で『無添加・無農薬』のもやしにこだわり、これをやり抜いたことが事業成功の最大要因である」と筆者に語ってくれた。日持ちのしない「無添加・無農薬」もやしを生産・販売するために商品改良・パッケージ改良・販売ルート・配達方法など打ち手としてのパスを繰り出しているが、キラーパスは「無添加・無農薬」と考えてよい。現在ではカイワレ、ブロッコリーなどさまざまなスプラウト(発芽野菜)を生産しているが、全て「無添加・無農薬」である。


今、新型コロナウイルスショックでどの企業も新常態(ニューノーマル)に適合しなければならず、頭を悩ませている経営者も多い。こんな時こそ、これまでやってきた常識を否定し「誰に何を」と「本質的な顧客価値は何か」という事業コンセプトとそれを実現する打ち手としてのキラーパスは何かを考えていただきたい。







アタックスグループ主席コンサルタント・丸山弘昭
2020年9月15日フジサンケイビジネスアイ掲載

 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


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