知恵の経営

第252回

要望で品ぞろえするスーパー

アタックスグループ 2020年7月28日
 
今回は、鹿児島県阿久根市で、生鮮食料品から自動車までを取り扱う総合スーパー、マキオを紹介する。同社は1985年、現社長の牧尾英二氏が、実弟が経営していた小売業を立て直すため、自動車メーカーを辞めて地元に戻り、設立したのが始まり。同年、日本で初めて小商圏(人口3万人以下)で、24時間年中無休の、大型店舗(売り場面積3500坪)の開設を国に申請したが、「商圏に30万人以上が必要」と言われ行政の許可が下りず、11年後の97年にようやく、「A-Zあくね」を開店できた。

続いて2005年に「A-Zかわなべ」、09年に「A-Zはやと」をそれぞれ開店、現在では年間650万人が訪れる総合スーパーに成長した。

同氏は「実弟の店の立て直しのため故郷に戻る」という人生の一大方向転換を強いられたがこれを「天命」と捉えた。好きでもない小売業に全身全霊を打ち込むため、小売業を「天職」と自らに納得させたのだ。この経緯が、同社のビジネスモデルを決定づけた。すなわち、徹底した「利他の心」が理念にある。

過疎化と高齢化が進むこの田舎町で「不便な生活を強いられている人々が便利さを享受できるような店を作りたい」と考え、販売効率より「客の便利さ」に焦点を合わせることにしたのだ。「気軽に足を運んでいただき、ワンストップで買い物ができる巨大な生活総合店」が基本コンセプトである。

こうした経緯から、田舎町に大型店舗を開設するという業界の非常識を実行に移した。買い物は空き時間を充ててほしいという思いから24時間営業に取り組んだ。共働き夫婦、深夜まで営業している飲食店、早朝の工事現場勤務者などの人々に便利さを提供。夜9時から翌朝7時までの売り上げが全売り上げの3割を占める。

国内最多といわれる38万アイテム以上の品ぞろえも、「お客さまニーズ第一」という基本コンセプトからである。これは、同社が展開する総合スーパーの店名にも表れている。つまり、生活必需品は「AからZまで」そろえていることを示す。

中には、年に1つしか売れないものもある。同社では、社内にバイヤーを置かず、商品管理も行わず、売り上げ目標・事業計画も作成しない。ただ、売り場責任者が客の要望に応え続け、それぞれの権限で商品を入荷する分権型の組織である。自動車販売も客の声から始まった。車の販売を始めたことで、給油、車検のニーズが生まれ、A-Z内で完結するように事業を拡充していった。

同社は、業界常識にとらわれず、販売効率を優先させず、客のニーズに応える商品アイテムを提供し続けることで高い評価を得てきた。


アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明
2020年7月28日フジサンケイビジネスアイ掲載
 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


HP:アタックスグループ

このコラムをもっと読む
知恵の経営

同じカテゴリのコラム

キーワードからコラムを検索する