知恵の経営

第272回

組織知・人間力を若手に継承

アタックスグループ 2020年10月14日
 
今回は、大阪市の中堅ゼネコン、三和建設を取り上げる。同社は「人を大切にする経営学会」(会長・坂本光司法大大学院教授)が主催する「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞で審査委員会特別賞を受賞したこともある。1947年に鹿島組(現鹿島建設)の常務だった森本多三郎氏が創業した。2008年、4代目社長に就任した森本尚孝社長は、「何でもできるというのは、何もできないのと一緒」と考え、「ファクトリー(工場)に価値を足す」という意味をこめ、食品工場に関わるトータルソリューションという事業ブランド「FACTAS(R)」を構築した。


食品工場以外にも、マンション分野・倉庫分野の2ブランドを設定し、総合建設業であるにもかかわらず、3ブランドに対し集中特化することを決めた。


同社が食品工場に特化したのは、創業者が壽屋(現サントリーホールディングス)の工場の戦後復興を手伝ったことがきっかけだった。1951年、サントリー山崎蒸溜所の施工を手掛けた。その後もサントリー食品工業の宇治川工場の施工を手掛けるなど、同社には長年に渡る数多くの食品工場の設計・施工の蓄積がある。そうした実績を通して、施主の思いをくみ取り、その目的にかなった価値を生む建物を重視し、長期的な満足、深い感謝につなげてきた。


また同氏は、2013年、経営理念を「つくるひとをつくる」と定めた。大手ゼネコンとの厳しい競争にさらされている同社にとり、自前で人材を育成できるかどうかは死活問題。特に、食品工場では、温度管理・湿度管理・圧力管理・清浄度に応じたゾーニング・的確な材料選定など、一般の建築物とは異なる高度な専門知識と経験が必要とされる。同社の組織知になっているといえども、こうした技術やノウハウは、一朝一夕には身に付かない。


建物をつくるのは人であり、客の高度な潜在ニーズを引き出し、それを形にできる提案力や専門能力、思いをくみ取る人間力が必要だ。そのため、社内大学「SANWAアカデミー」を開催し、年間で100時間ほどの講座を開催している。その特徴は、講師を、社内の一定の経験年数や資格のある先輩社員が務め、現場で磨いた技術や経験を元に、現場で見てきたこと、現場で起こり得る組織知をレクチャーする。その中で、社員の人間力も高めていくのだ。


建設業に限らず、全ての企業に言えることだが、やはり企業は人だということを考えさせてくれる事例である。


アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明
2020年10月13日フジサンケイビジネスアイ掲載
 
 

プロフィール

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顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


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