突然やってきた新型コロナウイルスショックで資金繰り対策に頭を悩ませている経営者は多い。短期的に考えれば会社は資金さえ確保できれば倒産することはない。経営者はまずは固定費を中心としたコスト削減と緊急融資、事業継続の助成金などで、何としても資金を確保し、今回の難局を乗り切ることである。大事なことはいずれ新型コロナは終息するが、その時の経済環境はコロナショック前とは異なったものになるという考えを持つことである。パラダイムシフトにより新常態が出現するといってもよい。
現在は、第4次産業革命の時代であり、企業経営をDX(デジタル・トランスフォーメーション)によって変革しないと将来がないと言われている。その代表例はテレワーク(在宅勤務)の導入である。テレワークが一般化すると社員同士が直接接触する機会が減り、会社への帰属意識も薄れることにもなりかねない。ここで大事なことはテレワーク時代における「働きがいのある会社」とはいかなるものかを考えることである。
筆者は長期視点で考えると「働きがいのある会社」とは外に対しては社会に貢献できるお役立ち企業であり、内に対しては社員が自らの成長と幸せを実現できる社員満足第一企業である。
1991年に米国で設立された「Great Place to work(GPTW)」という組織がある。この組織は社員にとって「働きがいのある会社」を社員にアンケートし、その結果を公表することで「働きがいのある会社」の普及と実現を支援することを目的としている。GPTWが定義している「働きがいのある会社」は経営者にとって大変参考になる。
「働きがいにある会社」を構成する要素は3つで従業員を中心に頭の中に3角形の図をイメージしていただきたい。
1つ目は仕事との関係性で、そのキーワードは「誇り」である。自分が行っている仕事に誇りが持てるかどうかである。
2つ目は一緒に働く仲間との関係性で、そのキーワードは「連帯感」である。仕事で厳しい状態に追い込まれることも当然あると思う。こんな時、一緒に働いている仲間と協力して仕事ができる連帯感の持てる職場であれば苦しさも乗り越えることができる。
最後はマネジメント層との関係性で、そのキーワードは「信頼」である。社員が勤務している会社や経営陣を信頼できる会社は「働きがいがある会社」であると思う。
働き方改革は国の基本方針であるが、今回のコロナショックでテレワークが一挙に進み、人々の働き方を抜本的に見直すことになる。中堅中小企業の経営者がテレワークが一般的となるアフターコロナ時代の「働きがいのある会社」を目指されることを期待したい。
アタックスグループ主席コンサルタント・丸山弘昭
2020年5月12日フジサンケイビジネスアイ掲載