知恵の経営

第152回

多品種微量を完全受注生産

アタックスグループ 2018年3月12日
 
独自の「池(市場)」を見つけだし、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している企業を紹介している。今回は金属ばねの設計、製造、販売を行う東海バネ工業(大阪市西区)の池クジラぶりを見ていきたい。

同社は1934年3月、南谷三男氏が創業した。現社長の渡辺良機氏は大学卒業後、別の会社に就職していた。創業者の子供3人が全員女性だったことから、遠縁にあたる渡辺氏に後継の声がかかり4年間にわたり口説かれ続けて、71年に入社、84年に社長となった。

創業以来80年以上にわたり、ばね一筋。他社がやりたがらない仕事を引き受け、顧客の要望に対応してきた。いまでは従業員86人の規模でありながら、明石海峡大橋の土台部分を支えるばねや、東京スカイツリーの揺れを抑制する制振用ばねなどに採用されている。

なぜ、同社のばねはこれほど活用されているのか-。

1つは、平均受注ロット5個の多品種超微量・完全受注生産で1個からの製作に応じているからだ。日本ばね工業会の欧州視察に参加した渡辺社長は、「単品特化のばね屋が値引きしたら消滅する運命」「人が嫌がる仕事は正当に評価されるべき」ことに気付いた。

この結果、非価格競争の世界に足を踏み入れ価格決定権を得たのだ。値引き交渉をしてくる問い合わせには「他社をお探しください」ときっぱり断る。また、納期も同社の都合を理解してもらった顧客の注文にのみ応じている。

こうした対応を可能にしているのが、同社のデータベースである。注文が入ると、その顧客が過去に発注した設計図面から参考になる図面を瞬時に検索して新たな図面を提案でき、材料の在庫管理データとの連携で見積もり管理システムを通して、納期を素早く回答できる。そのうえ、ばねの仕様・設計要求・条件は、顧客ごとの専用ページで過去の全製品の履歴を確認できるため、再発注もしやすい。

2つ目は、顧客が必要とする品質のばねを永続的に作る態勢の構築にある。同社では最も重要なのは、ばねを作る匠の技と考えている。

ばねの製作に必要な「金属ばね製造技術士」という国家資格の有資格者が多く在籍し、日本一難易度が高いと自負する社内資格制度も制定、高度な技術を若手に伝承する仕組みが機能している。加えて、手作業による匠の技の伝承だけではなく、その技術を落とし込んだ機械で、匠の技を再現することにも成功している。

同社は、ITを活用した完全受注生産体制と徹底した匠の技の伝承により高く評価され、数多くの注文が殺到している。

同業他社がやらない・できない、「単品に特化した多品種微量・完全受注生産」の金属ばね専門メーカーという「池」のクジラとなった。

<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明

2018年3月12日フジサンケイビジネスアイ掲載
 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


HP:アタックスグループ

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