知恵の経営

第189回

高学歴職人集団が一貫施工、平成建設の「池クジラ」ぶり

アタックスグループ 2019年3月12日
 
独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となって高収益を維持している企業を紹介している。今回は建築業・不動産業の平成建設(静岡県沼津市)の池クジラぶりを見ていきたい。

同社は1989年、秋元久雄社長が創業した。秋元社長は48年に大工の棟梁(とうりょう)の家系に生まれ、父親が「俺たちの仕事は達成感があるし、お客さんが喜んでくれる。こんなに楽しい商売はない」と話したのを覚えているという。ところが高校生の頃、実家の工務店が倒産。大学進学をあきらめ自衛隊体育学校に入学した。中学時代は勉強のできるもやしっ子だったが、劣等感を克服すべく重量挙げでオリンピック出場を目指した。夢はかなわなかったものの、一生懸命努力し、全日本選手権に出場した経験は、その後の人生で大きな自信になった。

卒業後、デベロッパーとハウスメーカーで営業マンとして働き出したが、次第に建設業界に違和感を覚え始めた。大工・職人が大切な施主のことを考えようとせず、父親世代が持っていた誇りを失っていたからだ。さらに大工・職人の減少に歯止めがかからなくなっていた。一方で、職人の仕事は絶対に工業化できない。このいかんともし難い状況から脱却するには、自分の手で一流の大工・職人を育てるしかないと気づいた。

同社は毎年、新卒の大学生や大学院生を募集し、“高学歴職人集団”を築き上げていった。秋元社長は「優れた技能があるだけでは大工とは呼べない。棟梁ともなれば現場監督もこなす必要がある。さらに後輩に対する指導力も必要になる。後輩の面倒を見れない人物が、一人前の棟梁になれるはずがない」と考えた。少なくとも祖父や父はそんな棟梁だった。

そこで採用活動に全力投球し「やりがい」や「大工の面白さ」を訴えた。能力だけでなく秋元社長と価値観が合う人物を厳選して採用した。その結果、大工を目指す学生の間で認知度は年を追うごとに高まり、大手就職情報会社が公表する「大学生の人気企業調査」で大手ゼネコンと肩を並べて毎年上位にランクインする常連になった。

次に自社の社員に、営業、大工、施工、設計、デザイン、メンテナンスまで全ての工種を経験させて多能工化し、一貫で行えるようにし、現場への効率的な人員配置と工期短縮を可能にした。また全てを内製化することで、施主と現場で話し合いながら設計を臨機応変に変えることができるため、施主により大きな満足度を提供している。

平成建設は、工程の内製化と多能工化に取り組んで高学歴職人集団を創り上げた。静岡、神奈川、東京で富裕層の顧客から依頼された注文住宅や賃貸マンションを一貫施工体制で建設し、工期短縮や臨機応変な設計で高い評価を得ている。こうして同社は、この市場(池)のクジラになった。

<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明

2019年3月12日フジサンケイビジネスアイ掲載
 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


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