知恵の経営

第165回

お茶屋さんのパートナーに

アタックスグループ 2018年7月17日
 
独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となり高収益を実現している企業を紹介している。今回は食品包装資材の企画・製造・販売の吉村(東京都品川区)の池クジラぶりを見ていきたい。

同社は1932年、吉村英一氏が創業。73年、後継社長に就いた現社長の父、吉村正雄氏は茶袋の生産能力を飛躍的に伸ばし商圏を東京から全国に拡大して業界トップになった。2005年に長女の橋本久美子さんが3代目社長に就任。ペットボトルのお茶が売れ始めて日本茶をいれる習慣が急速に失われ、コーヒーが飲まれる社会に変化したことがきっかけだった。カタログ制作担当だった橋本社長は、消費者に目を向けるべきだと進言し、信頼を得た。

売り上げの95%が緑茶関連製品で直接の顧客は全国8000店の「お茶屋さん」だ。橋本社長は「顧客の視点から見直して業務プロセスを磨けば、成長のチャンスはある」と考えた。自社事業を「茶業界のビジネスパートナー」と再定義し、日本茶の需要創造に挑んだ。

経営の基本スタンスをプロダクトアウトからマーケットインへ転換。第1の経営方針が顧客の新市場創造型製品開発、顧客マーケティング支援業への大転換だ。直接消費者の声を聞く多様な仕掛けを作り、その一つが1995年から今も続く、消費者座談会だ。消費者ニーズを吸い上げ、改善へつなぐサイクルを素早く回すことにした。

第2の方針は、日本茶の新市場を創造する3つの仕組みだ。1つ目はパッケージ化、2つ目は小ロット生産向けデジタル印刷システム。1回分の茶葉が入る個包装用パッケージは、数百円からという店頭販売価格の手頃感もあり、パーソナルギフトの需要増加で大きく成長した。商品の各成長ステージに合わせて柔軟に顧客をサポートする。3つ目は店頭のデザインやPOP(販売時点情報管理)などの販売促進支援。包装紙やしおり、フィルターインボトルなど新しい茶器開発にまで、お茶屋さんのビジネスパートナーとしてフルサポートする体制を整えた。

第3の経営方針は、全員参加の目標管理と全社員の動機づけ。経営計画発表会、ES(従業員満足度)調査など社員一人一人が主人公になる多種多様な取り組みを実践している。特に力を入れているのが、従業員全員が1人20秒で何かしら発言する5分会議だ。現場からの声を集め、現場社員しか把握できない顧客ニーズなどの情報を全社員で共有し、行動する企業文化が形成された。これが第1と第2の経営方針を支える。

吉村は、全国8000軒のお茶屋さんに特化、そのエンドユーザーのニーズ・ウォンツに目を向け、コーヒーやペットボトルに押され気味の業界の新製品開発・新市場創造までフルサポートする「お茶屋さん繁盛支援業」という池を創り上げ、そのクジラとなっている。

<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明

2018年7月16日フジサンケイビジネスアイ掲載
 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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