知恵の経営

第266回

郷土食の「南部せんべい」を全国的にヒットさせる 常識を覆して生まれた新風

アタックスグループ 2020年11月10日
 
今回は、もともと郷土食であった南部せんべいをお土産菓子にし、全国的に大ヒットさせたことで知られる小松製菓(岩手県二戸市)を取り上げる。同社は、1948年4月、小松シキ氏が21丁の焼き型から始めた南部せんべい屋が始まりである。

南部せんべいは500年以上前から、岩手県中央部から青森県南部にかけて位置していた南部藩の野戦食だった。白米を簡単に口にできない貧しい農家では、おばあちゃんがいろり端で焼くそば粉や小麦のせんべいは、大切な主食でもあった。

また同地区には、江戸時代からせんべい汁という、南部せんべいをしょうゆ味で煮立てた伝統料理もあった。

同社は、60億円規模の南部せんべい市場の過半数を占める、業界でダントツ1位。なぜ同社は、各家庭で日常的に見られた南部せんべいという食材で、顧客からここまでの支持を得ることができたのだろうか。

何と言っても、「商品開発力」の高さが理由である。南部せんべいは、岩手の郷土料理の具材として使われ、地元の高齢者には昔から親しまれていたが、女性や子供にはなかなか浸透していなかった。

そこで同社は、69年にバターや砂糖、卵の入った甘く香ばしい厚焼きせんべい「まめごろう」を開発した。これまでにないクッキーやサブレのような少し洋風のサクサクとした歯応えと口の中でホロホロと崩れていく食感が受け、人気商品となった。その後、洋菓子風の味わいを加えたCAFE巖手屋、お酒と一緒に楽しむBAR巖手屋など、個性豊かな商品を数多く開発。現在、商品の種類は100種類を超える。

そうした商品群の中でも、とりわけ反響が大きかったのが2009年に開発された「チョコ南部」である。一度焼き上がったせんべいを粉々に割り、チョコをコーティングするという大胆な発想から誕生した。社内から猛反対があったが、発売当初から予想の10倍を売り上げる大ヒット商品になった。同社には、過去の業界常識を覆す、革新を受け入れる風土があったのだ。

さらに情報発信力も高い。16年にロードサイド型店舗「北のチョコレート工場&店舗2door(ツードア)」を開店させた。工場はガラス張りで誰でも見学自由で、イートインスペースもある。さらに同敷地内には、ソバや天ぷらの食事処自助工房「四季の里」や創業者の小松シキ記念館もあり、同社はこれら一帯を「南部煎餅の里」として運営。県内外から多くの客が来訪し、新たな観光・お土産スポットとして人気を博している。

地域や企業には、まだまだ知られていないが、魅力的な商品・技術が数多くある。その魅力をどう伝えるかに悩む経営者には大いに参考になる事例と思われる。


アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明
2020年11月10日フジサンケイビジネスアイ掲載
 
 

プロフィール

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顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


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