第17回
共成功信念とWin-Winとの違い
StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ 落藤伸夫

前回、共創の成功条件として4つのポイントと、その上位概念として「共成功」信念を挙げました。今回も、この話題を掘り下げていきます。
共成功信念がポイントになる理由
共創はどうしたら成功させられるか。「共通の目的を設けること」、「違いを受け入れること」、「小さく始めること」そして「パートナーを手段ではなく彼の目的を実現しようとする主体として尊重すること」という「行動」要因が挙げられますが、そう簡単ではありません。
このため「姿勢」あるいは「気持ちの持ち方」という上位概念がポイントになると言われています。
そこで多く指摘される要素が「信頼」です。確かに、共創が成功した場合に要因を問われると、多く指摘されるのが信頼です。あるいは失敗要因を聞かれた場合も「最後まで信頼関係を築けなかった」と言われます。
とはいえ共創を育む途上で信頼をベースにするのは難しいと考えられます。信頼は行動4要因が満たされた場合の結果であって、満たされない場合の推進力にはなり難いからです。信頼の重要性は振り返ると理解できますが、その途上での原動力は別の要素だと考えられます。
では何が原動力になるか?各パートナーが「パートナーの成功が、我が成功に繋がる(共成功:Success Together)」を信念とすることです。「自分には答えがないから、実現能力がないから」と考えて共創を模索、次に「我が成功は、パートナーの成功にかかっている」と気付く、こうして共成功信念を抱けるようになります。
共成功の強みは「共創が上手くいかないなら抜け出てやろう」との自然な考え(邪念)に打ち勝つ力になり得ることです。共創関係は自発性がベースです。地域活性化などボランティア活動としての共創はもちろん、たとえ契約で定めた共創関係であっても「気持ちが乗らないので手を抜く」が可能だからです。
このような関係の中で「今は関係が上手く築けているとは言えないが、パートナーはこの共創でこそ成功できると考え、工夫や努力を尽くし、時には忍耐しているようだ。ならば自分も我が儘ばかりとはいかないだろう」との気持ちを互いに育み自律することが、共創の礎になると考えられます。
Win-Winとの違いと、共成功の本質
共成功について“Win-Win”と混同されそうですが、違います。Win-Winは利益に注目、関係は二の次だからです。
もっと条件が良ければ相手を変える、あるいは一定期間で利益が出なければ解消するのが前提です。
「共通の目的が描けない(描けても解釈で食い違う)」、「互いの違いを認めず、自分のやり方を押し付ける」、「小さく始めてステップアップできない」あるいは「パートナーを手段として扱う」などの現象が見られる場合にその原因を探ると、お互いあるいは片一方がWin-Winを目指していることが少なくありません(但し、この姿勢が必要になる、成功のカギとなる場面は、もちろんあります)。
一方で共成功は利益ではなく関係に注目、それが成功の礎と考える思想です(利益を追求してはならないとの意味ではありません。共成功を目指す限りは、利益は指標として副次的という意味です)。
行動4要因に外れる状況があっても、自らは共創を目指す関係の強化に向けて工夫や努力、忍耐を尽くします。そうやって相手を成功させることが自分の成功に繋がると信じているからです。
「そんな奇特な心持ち、皆が持つものなのだろうか?」意外と目にすると感じています。例えば社員とは、経済的利得はもちろん、成長面でも共成長を目指します。最近では社員が「この会社で働くことが自分の成長につながる」と考えられるようにしなければ有為な人材を確保できないとさえ言われています。
またBtoBビジネスでは取引先同士が共成功を目指しています。「必要な資材を調達できるなら、できるだけ安い会社が良い」と考える企業もありますが、多くは「この会社と付き合うことで自社が発展できるか」を基準に取引先を決めています。
時には競争相手同士が共成功を目指す場合さえあります。同業者同士が集まる商業集積は、その典型例でしょう。
「没自我のサービス精神が必要なら、共創はハードルが高い。」共成長信念は無条件の献身ではありません。成功を勝ち取りたいとの強い想いを発露する方向性です。
「私はこの共創から絶対に成果を得たい。そのため共創関係構築には誠実に取り組む」との姿勢です。自分が持つ共成功信念をパートナーが持っていないと分かれば、関係の見直しが必要かもしれません。共成功信念とは、それほど“関係”に重きを置いた、真摯な心持ちです。
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なお、冒頭の写真はChatGPTにより作成したものです。
プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)
中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA
日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。
現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。
新型コロナウイルス感染症が収束して社会的にも中小企業金融においても「平時」に戻ったとの声がある中、今後は「共創」を目指す企業が躍進していく時代になると確信、全ての中小企業がビジョンを描いて持続と発展を目指すよう提案することとして「共創型金融の時代!あなたはビジョンを描けますか?」コラムを2025年10月からスタートさせた。
【落藤伸夫 著書】

『日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル』
さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。
Webサイト:StrateCutions
- 第17回 共成功信念とWin-Winとの違い
- 第16回 共創の成功条件:「共成功」信念
- 第15回 危機を共創の入り口にする
- 第14回 「社員が共創パートナーにならない」に対処する
- 第13回 社員を共創パートナーに変える方法
- 第12回 社員を実行者から共創パートナーに変える
- 第11回 共創に取り組む方法
- 第10回 共創を現状打開の切り札にする
- 第9回 共創の環に地域金融機関を加えてみる
- 第8回 金融機関と共創する出発点
- 第7回 金融機関との共創を考える
- 第6回 視線を外(共創)に向けるメリット
- 第5回 競合相手との“共創”を考えてみる
- 第4回 社員の悩みは私の悩みと考え“共創”する
- 第3回 私の悩みは地域のお悩みと考え“共創”する
- 第2回 「共創型」を企業が必要とする理由
- 第1回 「共創型金融」コラムがスタート!