第10回
共創を現状打開の切り札にする
StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ 落藤 伸夫

2月28日、米トランプ政権はイスラエルと共にイランへの大規模な軍事攻撃を開始、両国は現在、激しい衝突状態にあり、日本の景気にも大きな悪影響を与える可能性があります。今回は不安の打開策として「共創」が切り札になり得ることを考えていきます。
厳しい事業環境の中で打ち手は使い尽くした?
アメリカ・イスラエルとイランの交戦という地政学的リスクに加え、日本経済が長年抱える「失われた30年」やコロナ禍の影も依然として色濃く残っています。
これらは一企業、ましてや中小企業の努力だけでどうにかできる問題ではありません。「自社にできることは限られる」と感じるのは経営者として至極真っ当な感覚であり、今の時代を生きる誰もが抱く共通の不安と言えるでしょう。
多くの経営者はすでに「やれることは全てやっている」状態にあります。社内のコストを極限まで削り、営業活動を強化し、新商品の開発に知恵を絞る。そうした「社内努力」は既に限界に近いところまでやり尽くしているのに、事業環境が追い打ちをかけるのです。
こうした厳しい状況下で、多くの誠実な経営者ほど「もっと頑張らなければならない」、「まだ工夫が足りないのではないか」と自分自身を責めてしまう傾向があります。
コロナ禍という未曾有の危機を乗り越え、深刻な人手不足や原材料費の高騰に耐えて会社を守り続けても「努力不足」に感じてしまう。それがとても苦しい、辛い状況であると筆者自身、感じています。
では、環境が切り替わるのを待てば良いのか?それでは現状は打開できないでしょう。
「できることはやった」という経営者でも、もう一つ策を加えられるとしたら、それは「共創」ではないかと考えます。
閉塞感の原因は努力の不足ではなく、思考の枠組みが「社内」という狭い範囲に固定されてしまっているからかもしれません。コストをどう下げるか、売上をどう上げるか。こうした問いを従来通りの発想で、自社の中だけで解決策を探そうとすると、どうしても質問も答えも同じ内容になってしまいます。
今必要なのは、努力の量を増やすことではなく、視点を置く場所を変えることだと考えられます。
まだまだ多くのタネがある共創
これまでの経営は自社内部を磨き上げることで成果を出そうとするアプローチでした。しかしこれほどまで外部環境が不透明で変化の激しい時代においては、自社のリソースだけで荒波を乗り切るには限界があります。
ここで提案したいのが「共創」です。自社の外側へ視線を向け、外部と手を取り合い、新しい価値を作り上げていくアプローチです。共創のタネは、会社の周りに、すでに眠っています。
まず「社員との共創」。経営者が一人で答えを出すのではなく、現場の最前線にいる社員の知恵を積極的に吸い上げ、新しいサービスや業務改善を共に形にしていく。これは組織の活性化にも直結します。
次に「顧客との共創」です。商品を売る相手ではなく、抱える深い悩みや不満を共有し、その解決策を一緒に考える相手とするのです。
「取引先との共創」もあります。単なる受発注の関係を超えて、新商品の共同開発や販路共有などで新しいビジネスチャンスを創出できます。
また「地域との共創」という視点もあります。地域が抱える課題(高齢化・過疎化等)を、自社の技術やサービスで解決できないか?地域課題をビジネス機会と捉え、社会的な存在意義と利益を両立させるのです。
「金融機関との共創」も可能です。彼らが持つ膨大な情報量や企業間のネットワークを、自社の成長のための知恵として活用できます。共に事業計画を練り上げ、将来のビジョンを共有するパートナーとなってくれるかもしれません。
「共創」という言葉から「何か新しい、難しいことに挑戦しなければならない」と感じるかもしれません。しかし、本質はもっとシンプルです。
「問題を自分たちだけで抱え込む」から「誰の力を借りれば、もっと良い未来を作れないか」への切り替えに他なりません。
中小企業には機動力と、経営者とステークホルダーの距離の近さという強みがあります。
目の前の社員や、長年付き合いのある顧客、信頼できる取引先との会話の中で「一緒に何か面白いことはできないか」、「この課題を解決するために、お互いの強みを使えないか」と問いかけがスタートとなります。
それが自社の殻を突き破り、新しい風を吹き込むきっかけとなるかもしれません。
本コラムの印刷版を用意しています
本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。
<印刷版のダウンロードはこちらから>
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【筆者へのご相談等はこちらから】
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<日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル>
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なお、冒頭の写真はChatGPTにより作成したものです。
プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)
中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA
日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。
現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。
新型コロナウイルス感染症が収束して社会的にも中小企業金融においても「平時」に戻ったとの声がある中、今後は「共創」を目指す企業が躍進していく時代になると確信、全ての中小企業がビジョンを描いて持続と発展を目指すよう提案することとして「共創型金融の時代!あなたはビジョンを描けますか?」コラムを2025年10月からスタートさせた。
【落藤伸夫 著書】

『日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル』
さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。
Webサイト:StrateCutions