共創型金融の時代!あなたはビジョンを描けますか?

第6回

視線を外(共創)に向けるメリット

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



本コラムシリーズ冒頭で“共創”を考えています。事業環境が厳しくなる中で改善努力の成果が現れてこない時、「努力が足りない」「もっと引き締めるべきだ」と考えがちです。

しかし実際には、課題そのものが“一社で解けない構造”になっているかもしれません。そこで視線を外に向け、共創を目指すことに意義があるのです。今回はこの点を、今年のまとめとして考えていきます。



視線を外に向ける効果

今、なぜ視線を外に向けて共創を目指すことが大切なのか?第1に「課題を正しく見直せる」ことが挙げられます。企業の中にいると課題は「自社の問題」や「現場の努力不足」として捉えられがちです。

しかし外部視点が入ると「業界の問題ではないか」や「顧客の期待(価値の定義)と乖離しているのではないか」などに気が付きます。共創を目指すと「問いの質」が高まるのです。


第2は「自社にない知や経験、発想が得られる」ことです。自社単独で事業を進め経営していく限界は、能力だけでなく視野においても現れます。

顧客は、当社が提供する便益は欲しいが別点での不便に抵抗を感じているかもしれません。異業種は、自社は当たり前と考える不都合を既に克服している場合があります。行政は、問題を長期視点や社会的な文脈で考えることに慣れています。それらに触れて、自社の不足を補っていくのです。


第3は「変化のリスクを分かち合える」ことです。新しい改善や挑戦には必ず不確実性が伴います。単独で取り組むと単一企業がリスクの全てを負わなければなりません。

共創により初期投資や損失を分散、社会的・心理的な負担を軽減し、学びを増幅させられます。自社だけでは踏み出せなかった挑戦が可能になるのです。


第4は「社内に悟りが生まれ、推進力が高まる」ことです。

共創に取り組むと「成果は顧客や社会が決めるもの、独りよがりでは誤導される」、「自分たちだけの都合は通らない」ことを悟る一方で「期待されている」、「工夫すれば評価される」との意識も生まれます。これにより社員は「やらされる」のではなく「意味のある取組みを、進んで行っている」と感じられるようになります。



行動を変え、成熟した企業になる

視線を外向きに変えた企業は、自社の役割を再定義できます。

「事業を行って儲けを産む仕組み(経営者や社員、資本家のための船)」という意識に加えて「社会を成立させる取組みを行う仕組み(交易を成り立たせて各地を活性化する船)」という役割に気付くけるようになるのです。


実は意識しようとしまいと企業には「交易を成り立たせて各地を活性化する船」役割がありますが、それに気付きません。

するとどうなるか?多くの場合、硬直化します。「今までと同じ慣れた事業を継続しよう」と、変化を面倒臭がるようになります。「今までより手を抜いて、楽に儲けたい」と考えるかもしれません。とは言え、この発想は自社のメリットになりません。次に挙げる企業との比較で魅力を失い、排除される可能性が高まります。

一方で「交易を成り立たせて各地を活性化する船」という役割を意識する企業は「何を仕入れ、どこに運べば、各々の地域をより活性化できるか」を考えます。地域の活性化のため、自社サービスの拡大も考えるかもしれません。自分を変化させて貢献を高めるようとするのです。


「利他の気持ちで自社の事業は回るのか?利益を出し、持続していけるのか?発展できるのか?」そのような心配は無用です。

「交易を成り立たせて各地を活性化する」とは、平たく言えば「沢山仕入れて、沢山売る」こと。沢山売れる場所を探せば買い叩かれることもなく大きな商いができるでしょう。自社も儲かるという構図です。


人は成長に伴って「自分だけ意識」から「周囲にも目を配り社会を思いやる意識」を持てるようになります。それに例えれば「共創ができる企業になる」とは「弱者の『寄らば大樹の陰』志向」ではなく「成熟したので他企業や社員、地域などとも連携できる」意味合いです。


これまで事業改善に努力しても成果が出なかったのは、視線が内向きで、成長できなかったからかもしれません。

ここで視線を外に向けて共創を目指すことで、新たな進歩を遂げられる可能性があります。共創相手として大企業や大学を探す必要もありません。いつもの顧客に寄り添い、隠れた不満に対応すれば良いのです。

身近な共創から活路が開ける可能性があります。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


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なお、冒頭の写真はChatGPTにより作成したものです。


 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

新型コロナウイルス感染症が収束して社会的にも中小企業金融においても「平時」に戻ったとの声がある中、今後は「共創」を目指す企業が躍進していく時代になると確信、全ての中小企業がビジョンを描いて持続と発展を目指すよう提案することとして「共創型金融の時代!あなたはビジョンを描けますか?」コラムを2025年10月からスタートさせた。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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