共創型金融の時代!あなたはビジョンを描けますか?

第5回

競合相手との“共創”を考えてみる

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 


本コラムシリーズの冒頭パートとして様々な“共創”について考えているところです。今回は、共創相手として同業者を考えます。普段は競合と認識している相手との共創を考えることで「誰とでも共創できる」との気持ち(メンタリティ)を身に着けたいと考えています。



競合企業がある場合の一般的な対応

企業経営者は普通「同業者は競争相手だ、敵だ」と考えているでしょう。ごく当たり前な考え方です。

同じ地域で同じ商品・サービスを提供していると「あの会社がいなければ、自社にもっとお客様が来てくれるのに」と感じるのは自然なことです。「彼らに勝たなければ、私のビジネスが上手く立ち回らない」とも考えるでしょう。


そうやってライバル視し、あるいは仮想敵認定して、その存在を警戒したり、時には挑発して事業を進めていく場合があります。

例えば競合相手の製品ラインナップを探って同様の品揃えを準備する、時には競合相手の顧客に「同様の製品が、私なら安く提供できますよ」と切り崩していくなどの対抗的・戦闘的な営業戦略や事業戦略を採る企業も、しばしば見かけます。


あるいは、競合と真正面からぶつかり合うのではなく、ぶつからない営業戦略や事業戦略を採用する場合もあります。差別化戦略は、その代表例です。

有力な競合先と同種同類の製品を提供する場合、顧客に「あの会社の製品よりも我が社製品の方が優れている」とアピールするのではなく「我が社製品には別の側面があるのです」とアピールする営業戦略です。

時には製品そのものを差別化(例:機能を増やす・減らして安価にする。デザイン性を高める)する事業戦略を採る場合もあります。


正面から相対するにしても差別化戦略を採るにしても、それを続けると、どうしても似たような答えしか見つからなくなるという壁にぶち当たります。

競争では「他を真似る」「値段を下げる」「宣伝を強化する」「他との違いを打ち出す」など選択肢が限られるので閉塞してしまうのです。

「どんなに差別化しても、しばらくすると競合が真似してしまう」と嘆息している企業は少なくありません。そうやって全員が、体力を削ってしまうのです。



競合企業と共創するという選択肢を考える

では、どうすれば良いのか?「同業者(競合・敵)と共創する」というアプローチがあります。「そんなこと、可能なのか?」との声が上がりそうですが、実は既に様々な場面で、ケースによってはかなり以前から実践されています。

面白いのは、競合と共創したからといって競争を否定する訳ではありません。自社だけでは実現できない価値を競合と共創した上で、仕切り直しして競合と競争するという建設的かつ柔軟な取組みです。


第1に挙げられるのは委託(OEM)生産です。例えば自動車メーカーは、自社で生産した自動車を自社ブランドで、自社の販売網に乗せて販売する他、相手方ブランドで相手方販売網に乗せて販売することを前提に、市場からは競合と認識されている企業に提供しています。


第2は、共同開発です。技術開発や品質基準設定を共同で行うなどの共創です。家庭用ビデオ黎明期に、独自路線で急速に技術開発を進めた企業よりも、連携・足並みを揃えて開発した方が市場への浸透度が高かったという事実は、今でも語り草になっています。


第3は、共同運用です。これは人口・需要の現象が顕著な今、注目されていると感じます。例えば大手スーパーなどが物流を共同運用して効率化しています。


第4は、集積です。例えば飲食業は特定エリアに複数店舗が集まることで人気を呼び、相乗効果を享受しています。

自店舗だけが営業し、自店舗だけの集客力に頼るより、競合と集積した方がお客様はそのエリアに足を運ぶことでさまざまな選択肢を楽しめるので訪れる回数が増え、エリアが賑わい個店の売上も向上します。競合も異業種も集積する商店街も、同様の効果があります。


他にも求人やイベント開催などの共創の形があります。


「頑張っているけれど成果が現れない。業績が伸び悩んでいる」という企業はもしかすると、減少しつつある需要を他と分配する発想が閉塞感の原因なのかもしれません。

「競合とも協力して効率性やブランド力を共創、まず需要を増やし、その上で競争しよう」との発想により現状を打破、自社の売上・利益を確保するばかりか、地域が丸ごと新たな境地に飛び込める可能性があります。




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なお、冒頭の写真はGeminiにより作成したものです。

 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

新型コロナウイルス感染症が収束して社会的にも中小企業金融においても「平時」に戻ったとの声がある中、今後は「共創」を目指す企業が躍進していく時代になると確信、全ての中小企業がビジョンを描いて持続と発展を目指すよう提案することとして「共創型金融の時代!あなたはビジョンを描けますか?」コラムを2025年10月からスタートさせた。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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