第13回
社員を共創パートナーに変える方法
StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ 落藤 伸夫

事業環境の大きな変化が見込まれる時、微妙な判断が求められます。拙速な対応は弊害が多いでしょう。「副作用の少ない、幅広いメリットが期待できる策」を探り、取り組むことが勧められ、前回で社員との共創を提案しました。今回はそれを実現する方法について考えます。
会社と社員の関係を作り直す
会社と社員の関係は「指示する側と指示を実行する側」という2項関係と捉えられることが多いでしょう。対立関係と語られる場合もあります。
会社(経営者)が方向性を決めて責任を負う、社員は決められた方向性のもとに仕事するという役割の違のため、このよ関係はある意味で自然ですが、「経営者は決めて管理する存在、社員は指示を受けて動く存在」との理解が固定化してしまい、共創関係の構築を阻む可能性があります。その結果、現場の知恵や工夫が十分に活かされず、会社としての可能性が広がりにくくなってしまうのです。
では、この弊害からどのように逃れることができるのか?会社と社員を二項関係ではなく、同じ目標を目指す仲間・同志と捉えるアプローチがあります。「管理する側とされる側を、一つの仲間・同志にできるのか?」できると考えられます。
例えば貿易船を一つの会社だとしましょう。船ですから船長や航海士、あるいは甲板長などの管理者と働き手という2つの階層ができますが、航海とビジネスを成功させようとするなら、対立している暇はありません。お互いを仲間・同志として同じ方向性を目指すことで成功が手に入るのです。
この場合は先ず会社が方向性を示すことになるでしょう。経営理念として情報発信するのはもちろん、経営者・マネジャーと社員との会話で常に目標が語られることになります。評価にも、盛り込まれるでしょう。
次に社員が目指す方向性を聞き、軸を合わせていきます。多くの場合、会社方向性に共感・同意を得た上で、その解釈や「社員としてできること」を聞くことになるでしょう。
そして現場での働きをみて「今のは良かった。会社と方向軸が合っている」とか「もっとピッタリ方向軸を合わせられるよう工夫しよう」などとフィードバックするうちに、両者の軸が合致するようになるのです。
普段に留意したい4ポイント
社員との共創をどのように進めるか?様々な形態があります。ある会社は普段の業務について提案をもらう形で行っています。別の会社では特別な時間・場を設けて経営者・マネジャーと社員が話し合う形で行っています。会社が斬新・革新的な方向性を提案、社員が前向きに取り組むことが共創の形という会社もあるようです。
いずれにしても「共創の実現」は業務を行うタイミングで、日常業務の会話などの質がポイントになります。
その第1は「心理的安全性を土台とした直接対話」です。社員が失敗を恐れず、自分の意見が歓迎されると感じられる環境を作ります。異なる意見や失敗を否定せず、歓迎する姿勢を示して、例えば「なぜそう考えたのか」と関心を持って問い返すなどして対話を深められます。
第2は「自己効力感を引き出す仕組みと場」です。社員が「自分たちの提案や行動が顧客や社会の価値を高めている」という自信(自己効力感)を持てるようにするのです。小さな取組みを実行まで任せ、成功を体験する積み重ねが自己効力感を育てます。成功を「当たり前」として受け流さず称賛・感謝すると共に、成功の理由を言葉にして共有することが力の源になります。一方で、自由にやらせながらも暖かい目で見守り、要望があれば助言や励ましを与えることも忘れてはなりません。
第3は「小さく始めて反復する実践プロセス」です。すべてを一度に変えようとするのではなく対話し、試し、見守り、振り返るというサイクルを小さく回し続けます。完璧を求めず失敗を前提にしながら、成功を目ざとく見つけて糧とすることで成長が継続するのです。
第4は「互いを尊重し、誰かの役に立つことを目指す」組織文化を醸成することです。上に3つを挙げましたが「え、何のこと?知らないよ」という人が経営陣・マネジャー・社員のいずれにおいてもそれなりの割合いると定着することはありません。社員との共創を「時に、特別なことをする」のではなく、普段に何を語り、どんな行動をするか、どのように評価してフィードバックする文化にまで浸透させることがポイントになるのです。
先行きが不透明な今、最も有効な取組みの一つとして社員との共創が挙げられます。気負うことなく小さく、しかし着実にスタートしていきましょう。
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なお、冒頭の写真はChatGPTにより作成したものです。
プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)
中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA
日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。
現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。
新型コロナウイルス感染症が収束して社会的にも中小企業金融においても「平時」に戻ったとの声がある中、今後は「共創」を目指す企業が躍進していく時代になると確信、全ての中小企業がビジョンを描いて持続と発展を目指すよう提案することとして「共創型金融の時代!あなたはビジョンを描けますか?」コラムを2025年10月からスタートさせた。
【落藤伸夫 著書】

『日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル』
さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。
Webサイト:StrateCutions