第15回
危機を共創の入り口にする
StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ 落藤伸夫 氏

企業経営には、努力だけでは避けきれない危機があります。現在の原材料不足やエネルギー価格の高騰、物流停滞、急激な為替変動などはその典型です。今回はこのような事態にどうやって対応できるか、考えます。
危機に立ち向かう3つのアプローチ
今、盛んにナフサ不足について報道されています。この現象により樹脂やプラスチック原料の価格が上昇し、包装材や化学製品、塗料、接着剤などの供給に影響が出たことで製造原価が上昇、納期は不安定になり、さまざまな業界へ連鎖的に影響が広がっています。
製造業だけではありません。建設業も資材高騰や供給遅延の影響を受けています。食品業では包装材不足が深刻で、外装のカラー印刷を取り止めて白黒印刷にするとの報道もありました。物流業では燃料価格が重くのしかかっています。
それでもまだ、操業が続けられるのであれば「まし」かもしれません。ニュースでは「近いうちに供給をストップせざるを得ない」と通告された企業・経営者の悲痛な声が報道されています。
これら「自社努力だけではどうにもならない問題」について、どのように対処するか?今、現れている現象を、経営努力で止めることはできません。どれだけ現場改善を行っても、どれだけ営業努力を重ねても、外部環境の急変を止めることはできないのです。このような「危機への向き合い方」には3つのアプローチが考えられます。
第1は、資金調達によって耐えることです。融資を受ける、あるいは借換により既存借入の返済を待ってもらうなどの方法による資金調達は、とても重要な対応です。資金が尽きれば事業が継続できないからです。
第2は、縮小均衡(リストラ)です。売上・収益が得られない事業を縮小(あるいは停止)して人件費・コストを削減、会社を小さくして持ちこたえる方法です。
第3は、新しい価値の創出です。既存顧客が求めていた商品(新商品)を取り扱い始める、既存商品を新市場に持ち込んで販売を目指す、今までタイアップしていなかった先と顧客を共有してお互いの売上・利益を確保する連携を実現するなどして、今までなかった価値を実現して未来を切り拓いていこうとするのです。
基礎知識や基本動作を身に着けさせる
「方向性が3つなら、それに取り組めばよい。試行錯誤すれば、なんとかなる。」確かに時間があれば、そして資金もあれば試行錯誤で良いと思います。
一方で金融機関職員だった時代、そうはいかなかった事例を沢山見てきました。残された時間の中で効果が得られない場合があり、時には試行錯誤という投資をリカバリーできず、敢えて言えば「逆効果」になってしまう場合さえあったからです。このため「危機を乗り越えるには、何もしないのが一番良い」という遺伝子が刻み込まれている経営者さえ、あります。
試行錯誤は必要ですが、早く、効果的に回していくことがポイントなのです。
ではどうすれば良いか?「試行錯誤を集団で回していく」という方法があります。他人の試行錯誤も取り込んで活用するのです。
他人の失敗あるいは成功を聞くことから得られる知恵は膨大です。あるいは、他人が感じ取った違和感について知ると、自分も気付くきっかけになるかもしれません。そうやって他人の実践知を取り入れることで、試行錯誤を高速化します。
自分一人で考えると、どうしても視野が狭くなります。自分自身あるいは自社の常識、業界やサプライチェーンの常識が全てだと思ってしまうのです。
しかし他人・他社・他業界・他サプライチェーンだと、それは非常識かもしれません。あるいはそのようなルールなど全くなく、我が社で活用すると都合の良い結果が引き出せるルールがあるかもしれません。
こちらを活用することで「改善に向けたもがき」の成功可能性を高めていくのです。
「そのような情報をインターネットで取り入れたら良いのではないか?」インターネットが普及する前から、危機を脱した、あるいは窮地に陥りながら脱出した企業・経営者の話は図書や講演などで手に入れることができました。
しかし直接に対面・対話して得られる情報の比ではありません。質問して詳細が聞けるばかりか、話し手の熱量まで受け止めることができるからです。このような次第で、異業種交流会や商工団体、金融機関等が繋ぐ縁をもとに情報交換できる経営者を見つけ、お互いに学び合うことが勧められます。
このような「共創」が、自分・自社の力ではどうしようもない危機を乗り切っていく原動力になると考えられます。
本コラムの印刷版を用意しています
本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。
<印刷版のダウンロードはこちらから>
https://www.innovations-i.com/shien/id/panf_id/?id=844
【筆者へのご相談等はこちらから】
https://stratecutions.jp/index.php/contacts/
<日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル>
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DYDL46H6/
なお、冒頭の写真はChatGPTにより作成したものです。
プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)
中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA
日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。
現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。
新型コロナウイルス感染症が収束して社会的にも中小企業金融においても「平時」に戻ったとの声がある中、今後は「共創」を目指す企業が躍進していく時代になると確信、全ての中小企業がビジョンを描いて持続と発展を目指すよう提案することとして「共創型金融の時代!あなたはビジョンを描けますか?」コラムを2025年10月からスタートさせた。
【落藤伸夫 著書】

『日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル』
さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。
Webサイト:StrateCutions
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