第63回
事業承継の落とし穴 親族・役員間の「感情的対立」を未然に防ぐための調査と対話
株式会社TMR 執筆
1. 事業承継問題の根本にあるもの
2. 感情的な対立の解決に必要なこと
3. 対立を防ぐための相互理解
4. 事業承継を成功させるには
近年、事業承継の問題がメディア等でも取り上げられています。多くの場合、財務的な問題や後継者不足問題に注目が集まりがちですが、その要因を掘り下げてみると、根本には感情的な対立が本質的な要因となっていることが少なくありません。事業承継は単純な事業(経営権)の引継ぎではなく、経営者の想いや責任を託すということであり、円滑な事業承継を行うには、親族や従業員とも理解し合っておくことが大切だと言えます。

1. 事業承継問題の根本にあるもの
事業承継を検討する時点で、事業として継続可能な状態であることが前提です。それにも関わらず問題が発生する理由として、「感情」に由来する以下のような要因が考えられます。
・ 親族間での不信感
・ 古参役員の不満
・ 次世代経営者への反発
合理的には問題がなくとも、事業に関わる人や後継者が納得できる背景がなければ、対立を生み事業承継がうまくいかないことや、引き継いだ後に事業が立ち行かなくなることもあります。また、対立やその対処を嫌って、後継者が承継を拒否することもあります。
親族間の対立
・ 長男 vs 次男(後継者争い)
・ 会社に関わっていない親族が後継者になる場合の不満
・ 配偶者(嫁または婿)の影響に対する不満
親族間の対立は、奪い合いだけでなく、譲り合う(押し付け合う)場合もあります。
役員や幹部との対立
・ 古参幹部の「自分の方が会社を理解している」意識
・ 若い後継者への不満や軽視
・ 権限移譲に対する抵抗
特に長い期間、現経営者と共に会社を盛り立ててきた幹部社員ほど、納得できる背景がなければ対立が発生することがよくあります。
創業者と後継者の対立
・ 経営理念の違い
・ リスク志向 vs 保守志向
・ 口は出すが責任は持たない状態
創業者からの事業承継では、創業者の意向が大きく影響するため、対立を生むことが多くあります。
2. 感情的な対立の解決に必要なこと
上記のような感情面での対立は表面化しにくく、問題として認識されず、対策が後手に回ることも少くないと思われます。
表面化しにくい感情的な対立
特に日本人に多い特長として、「本音を表に出さない文化」などに加え、対立していることを隠すという傾向があります。その結果、表面上の言葉や態度とは裏腹に、実際には非公式なグループ形成や、消極的な抵抗行動が行われていることなどもあります。
感情的な対立を解決する方法
感情的な対立が発生する要因は、ほとんどの場合、その背景にあります。解決するためには、背景を詳しく知り、理解する必要があります。具体的には以下のようなものがあります。
ステークホルダーの可視化
・ 誰が影響力を持つのか
・ 誰が反対しそうなのか
・ キーパーソンは誰なのか
非公式ヒアリング(インフォーマル調査)による内部把握
・ 幹部への個別対話
・ 親族への合意確認
・ 「本音」の把握
リスクマッピング
・ 対立リスクの整理(反対者層・潜在的不満層・中立層)
・ 影響度 × 発言力 での分析
こういった背景を把握することで、感情的な対立やその要因を理解することが大切です。後継者を認めたくない心理や、後継者になりたくない心理などを理解することにより、感情的な対立の解消を目指す必要があります。
3. 対立を防ぐための相互理解
背景を把握することに加えて、対立をできる限り生まないことも重要です。対立を未然に防ぐためには、そのプロセスが大切で、以下のような「対話設計」が考えられます。
いきなり結論を出さない
「後継者は○○に決定する。」などといった結論だけを提示するのではなく、意思決定に至るプロセスを共有することが大切です。「正しい結論」を提示するよりも「納得できる結論」を導く必要があります。共有が必要な人物は、上記の背景調査で判断できるようにしておくことも重要です。
経営理念の言語化
創業者の想いや会社の存在意義、将来の方向性など、業務や運営以外の想いについても共有し、共通認識を形成することが必要です。
100%賛成を目指さない
重要なのは、賛同できない理由の理解であり、反対することを理解した上で互いに納得して合意することです。
役割、処遇の明確化
対立の多くは「曖昧さ」から生じることが多く、誰が何を担うのか、報酬や肩書の整理、引退後のポジションなど、明確にすることで回避できることも多々あります。調査した関係者に必要な情報を共有することで、不信感の払しょくや安心感につながると思われます。
4. 事業承継を成功させるには
これまで記載したように、実際の事業承継で大きな障壁となる「感情的な対立」は、背景を把握し、関係者の心理を理解し、相互理解を行うプロセスを経ることで、その多くを解消することができると考えられます。成功のポイントは以下の通りです。
・ 丁寧な事前調査を行い、背景や関係者の心理も含めた把握を行う
・ 賛同、反対に関わらず、相互理解が行えるよう継続的な対話を行う
・ 理論的な正しさより、感情的に納得し合えることを重視する
また、これらを円滑に進めるためには、第三者の活用も有効です。当事者だけでは感情面の整理なども難しいため、背景調査の他、親族会議や経営会議、承継計画の策定などのファシリテーターや、利害整理、言語化支援などの役割を第三者に依頼することで、議論の整理や合意形成が円滑に進みます。
事業承継における最大のリスクは「人間関係」といっても過言ではありません。数字や運営ももちろん大切ですが、それ以上に信頼や相互理解を得ることの方が、将来的な発展のためにも大切なことと思われます。“決めたこと”ではなく、賛否あっても“納得して進めたこと”であることが、良い事業承継と言えるのではないでしょうか。
株式会社TMRでは、43年にわたり培ってきた実績とノウハウをもとに、リスクマネジメント体制の構築支援を行っております。これまで、事業承継に関する数多くのご相談をいただき、親族間や役員間の利害調整、対話の設計、承継プロセスの円滑化など、さまざまな課題に対して実践的なサポートを提供してまいりました。 また、組織体制の最適化支援や内部通報制度の整備、従業員研修による意識改革といった不祥事予防の取り組みに加え、不正疑義社員の行動検証や採用時の適性調査、個人信用調査などの分野でも豊富な実績を有しています。こうした多角的な支援を通じて蓄積してきた知見を活かし、事業承継に伴う組織リスクの低減と、関係者間の円滑な合意形成をご支援いたします。
プロフィール

株式会社TMRはビジネスにおけるあらゆるリスク対応を支援し、企業価値の向上を全力でサポートします。
・信用を第一に「誠意」「正確」「迅速」をモットーにご納得いただくまで親身にご説明いたします。
・マスコミや弁護士事務所、警察関連組織などへの調査協力も行っており、法令遵守で調査情報の秘密厳守、社会正義に即した調査を行います。
・ISO27001認証を取得しており、調査後の調査資料の廃棄に至るまで厳格に管理しています。
取引先や社員、株主などを対象に「反社会的勢力」との関係をチェックします。情報収集と収集した情報の蓄積を行い、独自でデータベースを構築し、情報利用についても熟知しているため、安心してお任せいただけます。
■信用調査
企業の与信調査(不動産や資産など)から採用時の個人 調査、その他、長年のノウハウを活用したきめの細かい各種信用調査を行います。
与信調査・不動産・資産・債権保全・信用調査・採用 入居者審査・身元調査・市場調査・各種マーケティングリサーチ・テナント調査・身元調査・訴訟関連・債権関連など
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企業リスク対策(情報セキュリティ、情報漏洩等)・ネット風評対策・ハラスメント対策・各種相談窓口開設(コールセンター、内部告発等)・その他 盗聴対策、各種セミナー開催など
Webサイト:株式会社TMR
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