第52回
不祥事発生時の対応【第1回 現代の不祥事対策】
株式会社TMR 執筆
1. 不祥事の内容
2. 不祥事で注意しなければならないこと
3. 現代の不祥事対策
近年は、有名企業や有名大学、政治家など社会的な影響が大きい不祥事も明るみに出ることが多くなったように思います。不正行為や法令違反などの犯罪行為に限らず、社会的な信頼を損なう行為は、たとえ法的に罰せられることはなくとも、信用を失い、社会的な非難を招き、時には立ち行かなくなることもあります。 今回は不祥事にはどのようなものがあるのかということや、現代の不祥事の特徴などについてお話させて頂きたいと思います。
1. 不祥事の内容
不祥事といっても様々なものがありますが、社会的な信頼を損なうような行為は基本的にすべて不祥事として扱われます。違法行為はもちろん、不注意や過失などに加え、社会的な倫理に反する行為など、その時代の倫理観によって変化する不祥事もあります。具体的な例としては、以下のようなものがあります。
不祥事の例
・金銭に関連する不祥事
不正会計 不正請求 申告漏れ 賄賂 横領 カルテル 不正取引 詐欺
・品質やサービスに関連する不祥事
食品偽装 データ改ざん 医療ミス 製造ミス 異物混入 製品不良
健康被害 システム障害 情報漏えい 誇大広告 ステルスマーケティング
・コンプライアンスに関連する不祥事
各種ハラスメント イジメ 不倫 暴力 違法薬物 密輸 過労死
・その他
不誠実対応 不適切発言 隠蔽 業務上の過失 従業員による不適切な行為
上記のような不祥事は、故意または不注意などによって引き起こされますが、未然に防ぐ十分な対策を行っていなかった場合、対策を怠っていたこと自体が不祥事となってしまうこともあります。
2. 不祥事対応で注意しなければならないこと
不祥事の対応は、発生前の「予防」と発生後の「発見」、「事実確認調査」「原因究明」「再発防止」の大まかな流れに沿って行います。これは、予想される損害の規模に拘わらず行うことが、その後の対応に生かされるものになります。特に、経営層が故意に不正を行っている場合や不正を認識していながら黙認している場合など、経営層が加担していることや企業ぐるみの事例もあるため、「事実確認調査」は慎重かつ迅速に行う必要があります。
不祥事発見時の注意点
不祥事の発見は、内部による通報に限らず、取引先等からの忠告や指摘、あるいは無関係な人のSNS等の書き込みなど様々なルートで発生を知ることになります。以下の例のような理由により、発生認知のタイミングが遅れてしまう可能性があるため、その後の対応を迅速に行う必要があります。
・ 慣習として行われていることが不正行為である事例。不祥事となりうる事柄を全社員が正しく認識していない、共有できていない等。
・ 内部通報制度が正しく運用されていない場合。
・ 外部への密告やSNS、動画等での拡散により、外部から突然発覚してしまう場合。
不祥事発覚後の注意点
不祥事発覚後は、速やかにその事実確認を行う必要があります。
「事実確認調査」は、「初動調査」と「本格調査」の2段階で行われることが通常です。
「初動調査」では、不祥事の存否や概要などを短時間で把握し、「応急措置」を行うべきか、「本格調査」に進めるべきかを含め必要に応じた報告活動などにより、経営層が暫定的な経営判断を行える材料を、スピード感をもって整えることです。
初動調査の結果、不祥事自体が存在していなかった場合や、事案が軽微なものであることが判明し、応急措置の対応により事案収束が見込める場合などの時は、危機管理が終了することになります。
一方、初動調査の結果、影響が大きい事案であることが判明した場合には、経営層は不祥事の全容やその原因追及を相応の時間をかけて解明するため、「本格調査」への移行を決定します。
「応急措置」について、個人が容易に情報発信できる現代では、隠蔽や誤魔化す対応を行った場合、すぐに真相が漏れ、或いはフェイク情報が拡散してしまう危険性があるため、最初から発生した事実が世間に知られることを前提とした対応を行う方が賢明と言えます。また、不祥事発覚時の対応速度が遅い場合、基本的に「対応が遅い=不誠実」と受け止められかねないため、不祥事が疑われないように、事実確認、調査の仕方、今後の対応策を迅速に伝えるといったアナウンスが必要です。
3. 現代の不祥事対策
不祥事の対策や対応はその内容によって異なりますが、未然防止の他、万一発生した場合には、きちんとした調査を行い、不祥事の内容を明確にした上で、信用の回復や社内の立て直しなどが必要となります。これらの対策や発生後の対応の詳細については、今後の掲載で別途お話させて頂きたいと思います。
その他に、現代の不祥事として特に意識しなければならいこととして、不誠実な対応や不適切な発言など、法的に罰せられることはないが、社会的な信用を損なう結果となってしまう行為があります。サポート電話の不親切な電話応対や講演会での行き過ぎた発言など、SNS等で拡散してしまうこともあり、たった一言の失言でも企業に大きな痛手を与えることがありえます。
今回は、不祥事となる事柄と現代の不祥事対策の特徴として、SNSを始めとする情報発信や情報拡散などの環境の変化に伴い、迅速な初動と誠実な対応が必要となっていることを取り上げました。こういった現代の不祥事の特徴も踏まえ、次回は発生時の対応について、不祥事の内容による違いなども交えて掲載したいと思います。
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