第57回
今後、生成AIを使いこなす企業と使わない企業の差はどう開いていくか
株式会社TMR 執筆
1. 生成AIの活用状況
2. どのように生成AIを活用しているのか
3. 成果に結びつける活用とは
4. 今後どのように差が開いていくか
企業活動において、AI導入に対する期待が世界的に高まり続けており、既に多くの企業が様々な業務でAIを活用し始めています。しかし、その活用度合いには大きな差があり、体系的にAIを業務に組み込んでいる企業から、文書作成などの一部の作業に留まっている企業まで様々です。
最近では、「生成AI」という言葉が一般的になり、従来までのAIとの違いを整理する必要があります。従来のAIは、過去のデータを学習してモデルを作成し、予測や作業自動化を行うものでした。一方、現在の「生成AI」は、学習したデータをもとに文章・画像・アイデアといった「新しいコンテンツ」を生成できるのが特徴です。こうした状況下、AIを戦略的に活用している企業とそうでない企業との差は広がり始めており、今後その差はさらに顕著になると予測されています。
今回は、生成AIの活用によって今後どのような差が生まれるのかについて考えてみたいと思います。

1. 生成AIの活用状況
国内約6,600社を対象とした調査によると、生成AIの活用を推進している企業は、大企業(資本金1億円以上)で4割超に対し、中小企業では2割超に留まっています。特に「会社として推進しているか」という問いには、大企業25%強、中小企業12%強と大きな開きがありました。推進を阻む要因としては、「人材不足(5割超)」「利点・欠点の評価不能(4割超)」「コスト(2割超)」が挙げられています。
一方、海外の調査では、生成AIを本格導入した企業は非導入企業に比べ、平均利益率が30%、収益率が約22%高いという報告もあります。総務省のレポートでも、日本はアメリカ、ドイツ、中国に比べ導入が遅れていると指摘されていますが、海外では既に生成AIが経営戦略の中核に据えられていることが伺えます。
これらの結果から、大手や海外企業が組織的に活用を推進する一方で、日本の中小企業は多くの業務が属人化し、特定部署や個人単位での利用に留まっている実態が推測されます。現状を前提にAIを部分的に導入しても成果につながらず、「ナレッジの共有(暗黙知の形式知化)」の促進を目的として、AI活用を見据えて業務プロセスや組織を見直す必要があります。また、今必要なのは、経営層が活用の必要性を十分に認識し、経営層が主導してAI投資と変革を主導することです。AIを使えば、単調な業務を減らし、人が価値を生み出す業務に集中し、ビジネス全体の価値を向上させることができるでしょう。AIはあくまで人の補助を目的としたものであり、人を切る(削減する)道具ではありません。
2. どのように生成AIを活用しているのか
AI活用の本質は、「何を変革したいのか」「どんな価値を届けたいか」を逆算して、どこでどう使うかを決める必要があります。
実際の業務システムにおける利用例は以下の通りです。
・ データ分析
顧客データ分析による広告最適化、需要予測、新事業のアイデア創出など。Amazonは需要予測に生成AIを活用し、在庫管理の最適化と大幅なコスト削減を実現しています。
・ 製造業
画像認識を用いた品質検査や、設備の予知保全による、ダウンタイムの削減。
・ サービス業
来客予測に基づくシフト管理、顧客の要望を可視化してデザイン・プランの提案。
・ その他
採用選考、コールセンター、医療画像解析、教育分野での個別カリキュラム作成、農業の育成管理など。
これらは単なるツール利用ではなく「業務プロセスへの組み込み」であり、競争力、収益性の向上や他社との差別化という形で明確な成果が現れています。 一方で、文書作成やプログラミング支援といった「一部の作業での活用」は、個人単位の生産性向上には寄与するものの、組織全体の大きな成果としては見えにくい傾向があります。
3. 成果に結びつける活用とは
真の成果を得るには、生成AIを単なる「効率化ツール」ではなく「経営戦略」と捉え、目的・目標を定めることが不可欠です。
・ 目的・目標の明確化
単なる作業の削減ではなく、新商品・サービス創出や収益構造の改革など、「変革」を意識すること。これを経営課題として位置づける体制が必要です。
・ 組織・体制
経営者が直接関与し、IT部門任せにせず全社横断的に取り組むこと。リスク管理を含めた業務への組み込みを主導する必要があります。
生成AIを使いこなす企業とは、導入自体を目的とするのではなく、達成したい目標のためにAIを手段として最適に用いている企業を指します。そして、AI活用による生産性向上によって生まれた時間を使って、人間がこれまでより付加価値の高い業務に従事できることが競争優位につながる本質的なメリットです。
4. 今後どのように差が開いていくか
AI活用は単なる技術的導入ではなく、経営そのもののあり方に直結するテーマです。経営層が明確な方向性を示し、組織全体を導くことが不可欠です。
これまで記載したように、生成AIを使いこなす企業は、AIによって自らの革新スピードをさらに加速させます。その結果、現状を維持しようとする企業との差は、これまで以上に急速に広がっていくでしょう。
「導入しなければ」という焦りから闇雲に動くのではなく、市場動向やリスクを冷静に分析し、経営戦略に照らして活用を検討することが、真に「生成AIを使いこなす」ことにつながり、成果を持続的に引き出すカギとなります。
無理に生成AIを使うことを目的化するより、企業として常に「改善・変革し続ける体制」を構築することこそが、最も重要なのではないでしょうか。
とはいえ、自社のリソースだけで取り組むには限界があり、必要に応じてプロンプトエンジニアリングの研修、セキュリティガイドラインの策定、業務選定のコンサルティングなどといった外部の専門家の知見や経験を取り入れることも、取り組みを確実にする有効な方法となります。
株式会社TMRでは、業歴42年のもと、培われた豊富な人材と多岐に渡るノウハウをもってリスクマネジメント体制の構築支援を行っています。組織体制の最適化支援や内部通報制度、従業員研修による意識改革などの不祥事予防だけでなく、採用した人員の個人信用調査のご依頼を承っている実績もあります。独自のノウハウと倒産企業予知情報「企業特調」や「日刊誌 ウォッチ」、弁護士事務所からの多岐にわたる問題解決で得た豊富な実績を元に効果的な支援を行っています。
プロフィール

株式会社TMRはビジネスにおけるあらゆるリスク対応を支援し、企業価値の向上を全力でサポートします。
・信用を第一に「誠意」「正確」「迅速」をモットーにご納得いただくまで親身にご説明いたします。
・マスコミや弁護士事務所、警察関連組織などへの調査協力も行っており、法令遵守で調査情報の秘密厳守、社会正義に即した調査を行います。
・ISO27001認証を取得しており、調査後の調査資料の廃棄に至るまで厳格に管理しています。
取引先や社員、株主などを対象に「反社会的勢力」との関係をチェックします。情報収集と収集した情報の蓄積を行い、独自でデータベースを構築し、情報利用についても熟知しているため、安心してお任せいただけます。
■信用調査
企業の与信調査(不動産や資産など)から採用時の個人 調査、その他、長年のノウハウを活用したきめの細かい各種信用調査を行います。
与信調査・不動産・資産・債権保全・信用調査・採用 入居者審査・身元調査・市場調査・各種マーケティングリサーチ・テナント調査・身元調査・訴訟関連・債権関連など
ISMS認証のノウハウを活用した情報セキュリティ対策支援やネット風評対策、ハラスメント対策などの企業のリスク対策のほか、盗聴対策などの個人向けの対策を含め、あらゆるリスク対策について対応可能です。
企業リスク対策(情報セキュリティ、情報漏洩等)・ネット風評対策・ハラスメント対策・各種相談窓口開設(コールセンター、内部告発等)・その他 盗聴対策、各種セミナー開催など
Webサイト:株式会社TMR
- 第57回 今後、生成AIを使いこなす企業と使わない企業の差はどう開いていくか
- 第56回 多様化する働き方への企業の対応 ~スポットワークという新しい働き方~
- 第55回 ハラスメント防止のための意識改革
- 第54回 不祥事発生時の対応【第3回 本格調査と本格対応】
- 第53回 不祥事発生時の対応【第2回 不祥事発生時の初動対応】
- 第52回 不祥事発生時の対応【第1回 現代の不祥事対策】
- 第51回 高年齢者雇用のメリットとリスク
- 第50回 人口減少に伴う日本の未来
- 第49回 経営者に求められる倒産リスク対策とは?【第4回 経営判断のリスク】
- 第48回 経営者に求められる倒産リスク対策とは?【第3回 外部要因のリスク】
- 第47回 経営者に求められる倒産リスク対策とは?【第2回 内部要因のリスク】
- 第46回 経営者に求められる倒産リスク対策とは?【第1回 倒産を防ぐためのリスク対策】
- 第45回 雇用リスクとは?【第2回 採用や待遇のリスク】
- 第44回 雇用リスクとは?【第1回 安全配慮義務の対策】
- 第43回 経営者リスクとは?
- 第42回 海外取引のリスク【第2回 海外取引におけるリスクマネジメント】
- 第41回 海外取引のリスク【第1回 海外取引における信用調査の重要性】
- 第40回 営業秘密の保護
- 第39回 業務上横領にはどう対応すべきか
- 第38回 企業のBCP対策【第2回 BCP対策の手順】
- 第37回 企業のBCP対策【第1回 BCP対策の状況】
- 第36回 企業不祥事の要因【第2回 自動車開発の不正認証取得事例から見る改善ポイント】
- 第35回 企業不祥事の要因【第1回 自動車関連企業の不正】
- 第34回 企業が行うべきリスクヘッジ【第4回 盗聴・盗撮から企業を守るためのリスクヘッジ】
- 第33回 企業が行うべきリスクヘッジ【第3回 情報漏えいのリスクヘッジ】
- 第32回 企業が行うべきリスクヘッジ【第2回 リスクヘッジの取り組み方】
- 第31回 企業が行うべきリスクヘッジ【第1回 リスクヘッジ能力の高い人材の確保と育成】
- 第30回 職場の心理的安全性
- 第29回 注意義務となっている反社チェック
- 第28回 投資先、出資先とのトラブル未然防止と発生後の対処
- 第27回 企業が行うべき反社チェックとは
- 第26回 企業におけるハラスメント 【第4回 企業間で発生するカスタマーハラスメント(カスハラ)とその対応】
- 第25回 企業におけるハラスメント【第3回 カスタマーハラスメントへの対応】
- 第24回 企業におけるハラスメント【第2回 パワーハラスメントの分類と事例】
- 第23回 企業におけるハラスメント【第1回パワーハラスメントがもたらす企業リスク】
- 第22回 企業のリスクマネジメントとして行う素行調査の有効性
- 第21回 反社チェックのポイント(採用編)
- 第20回 採用リスクを回避するバックグラウンドチェック(経歴調査)とは
- 第19回 個人情報との向き合い方【第2回 情報が流出する原因とリスクマネジメント】
- 第18回 個人情報との向き合い方【第1回 個人情報の背景と現在】
- 第17回 外部専門会社を活用した前職調査や身元調査で明らかになるネガティブ情報とは
- 第16回 資金調達における反社会的勢力の規制への対応について
- 第15回 倒産リスクのシグナルを読み取る必要性とポイント
- 第14回 顧客満足度を向上させるための相談窓口の設置
- 第13回 信用取引において必要不可欠な与信管理とは
- 第12回 オンライン面接へシフトする採用市場における調査専門会社の活用
- 第11回 採用時にネガティブ情報をつきとめるバックグラウンドチェック
- 第10回 企業の社会的責任として求められる、組織全体で行う反社対策
- 第9回 自社の内部統制は本当に機能していますか? 【第3回 内部統制の効果的な運用】
- 第8回 自社の内部統制は本当に機能していますか? 【第2回 内部統制の体制づくり】
- 第7回 自社の内部統制は本当に機能していますか? 【第1回 内部統制とは?】
- 第6回 不良債権リスクの高まりでより必要不可欠となる与信管理
- 第5回 コロナ禍の資金調達難に付け入る反社や黒社会の融資や買収の危険性
- 第4回 アリバイ会社との取引が懸念される場合の企業調査対策とは
- 第3回 採用調査で重要性が増しているリファレンスチェック
- 第2回 ビジネス取引において実施される信用調査とは
- 第1回 貸し倒れリスクを回避するための債権回収の対策