「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第96回

<緊急版>金融検査マニュアル廃止・新時代へ!

落藤 伸夫 2019年12月20日
 

金融庁は2019年12月18日、金融監督庁時代の1999年7月に制定、同年度の金融検査から利用されてきた金融検査マニュアルを廃止したと発表しました。 

https://www.fsa.go.jp/common/law/manualLink.html


金融検査マニュアルの12月廃止は本年9月に予告されていたこととはいえ、まる20年にわたり利用され金融機関の思考と行動を強く方向付けるバイブルであった同マニュアルの廃止を告げる文面を金融庁サイトで目にすると、中小企業金融の旧時代が終わり新時代が到来したと強い感慨を抱きます。一方で、今わかっていることは「新時代の幕が上がった」ことだけで、どんな時代になるのかは未だ分かっていません。本稿は、金融検査マニュアル廃止を知らせる緊急版として、廃止までの経緯・背景と今後への期待を簡単にまとめてみます。



金融検査マニュアルとは

金融検査マニュアルは、バブル崩壊後に積み上がった不良債権により金融機関が経営悪化して北海道拓殖銀行や日本長期信用銀行、日本債権信用銀行などが経営破綻したことなどを受けて設置された金融監督庁(金融庁の前身)により、不良債権対応を中心とした金融機関の健全化を目的として1999年7月に制定されました。不良債権には「決算書等の定量情報を丹念にチェックすることで、兆候をかなりの確率で捉えられる」という特性があることから、金融検査マニュアルは、定量情報をもとに顧客企業をスコアリングした上で企業を格付ける手続き(信用格付け)の徹底を金融機関に求めました。これをもとに適格と位置付けられる企業に融資を可とする判断が行われ、じ後も適切な管理が行われたかを金融庁は厳格にチェック(金融検査)したのです。



金融検査マニュアルへの批判

金融検査マニュアルには早い時期から批判がありました。その手順・判断によると特に中小・零細企業の円滑な資金調達が阻害されるというのです。これを受けて金融庁は、中小・零細企業の融資判断においては経営力や技術力、販売力等の経営実態を総合的に勘案できることとした「別冊中小企業融資編」を2006年に発表しました。


その後に金融庁は顧客企業・地域との関係を重視するリレーションシップバンキングを推進、政府も2008年に勃発したリーマンショック時は「中小企業金融円滑化法」等により中小企業向け融資を積極的に推進すると共に、既に借りた融資金の返済が困難な企業に対しては猶予に応じるよう金融機関に求めるなどの措置を行いました。



事業性評価の発表

金融庁は2014年に「平成 26 事務年度 金融モニタリング基本方針 (監督・検査基本方針)」を発表、今後の金融モニタリングでは、企業の生産性向上や地域活性化への姿勢、顧客の利益になる金融商品・サービスの提供、企業への現実の対応等に加えて、企業の事業性を評価する取組み(「事業性評価」)について検証することを明確化しました。企業活動の国際化や人口減少が進展する経済環境において、グローバル企業・産業が国際競争力の維持・強化を目指したり、人手不足にあるローカル企業・産業が生産性を向上して雇用や賃金の改善を目指している中、金融機関がこれらの取組に貢献するには、財務データや担保・保証に必要以上に依存することなく、事業の内容、成長可能性等を評価して助言や融資を行うことが必要と判断したからだと考えられます。


しかしこの思惑は、うまく実現しなかったようです。金融庁は「金融システムの安定」、「利用者の保護」、「市場の公正性・透明性の確保」を使命に設立されましたが、金融危機時に設立された経緯もあり、金融システムの安定に重きを置く傾向があったようです。金融検査マニュアルは、時が経るにつれ中小・零細企業の円滑な資金調達に配慮するよう調整されましたが、その存在は金融機関に「過去・部分・形式」に意識を集中させ続けていました。そのため金融庁は平成29年12月「金融検査・監督の考え方と進め方(検査・監督基本方針)(案)」において廃止(時期未定)を決めたのです。



金融検査マニュアル後の新時代を形作る

金融検査マニュアル廃止により中小企業向け金融が新時代に突入することに間違いありません。しかし、どんな時代になるかは自明ではありません。金融庁はラフスケッチを提示していますが、金融機関は概ね「総論は分かったが、具体的にどうすれば良いか分からない」というスタンスです。また今後は、金融のカウンターパートである中小・零細企業はもちろん、支援者や地域(行政・諸団体)からの提案・貢献も期待したいところです。


日本政策金融公庫で約30年、中小企業金融に携わり、事業性評価について萌芽期以前である平成23年「金融と経営支援の一体的な推進」から関心を持ち続け、今は中小・零細企業と金融機関を取り持ち事業性評価融資をご支援する中小企業診断士である筆者は中小・零細企業と金融機関にとって、いやそれだけでなく地域社会や日本にとって、大人世代だけでなく子供世代にとって、望ましい「新世代」を是非とも形作りたいと考えています。今後は、それに向け積極的に情報発信する所存です。




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プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


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