「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第307回

石破総理退陣から企業への教訓を考える

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



先週、石破総理大臣の辞任が大きなニュースとなりました。夏の参院選以降、去就が取り沙汰されていたので動静を見守っていた読者も多いでしょう。

本コラムは政治には関わらないことを旨としていますが、会社の活性化についてヒントが得られると思うので、この側面から考えていきます。

なお本記事は、事実を解明するというより筆者の推察をベースに企業人が得られる示唆を探ることを目的としています。ご承知おき下さい。



期待から辞任への経緯

昨年の石破内閣成立時、筆者の周囲には期待の声が高かったことを思い出します。従前の自民党総理大臣とは異なり、大企業ではなく中小企業や庶民に目を向けてくれるとの期待です。

当時は(今でも)日本全体が物価高や労働者不足等に翻弄されて生活を維持することに、あるいは生活そのものに困難を感じる人が多く「大企業寄りではなく生活者寄りの石破総理なら打開してくれるのではないか」との期待があったと感じられます。


一方で、その期待は段々と薄れたように感じられます。特段の政策は見当たらない中、最低賃金引上げへの声掛けと、一定のお金を配布するとの提案が目立ちました。

前者は実施されましたが、労働者の過半を雇用する中小企業にとっては重荷だと指摘されています。後者は反対にあい実現していません。

この状況で衆議院選挙、東京都知事選挙そして参議院選挙と立て続けに自民党が敗北、石破総理の責任を問う声が高まり抗えなくなったのです。



「反対勢力」への幻想的期待

まず石破政権への当初の期待への源泉について考えてみます。発足時には「政治と金」問題で、政治への不信感が高まっていました。

コロナ禍を乗り越え大企業を中心として活況といえるレベルにまで景気が回復したとはいえ、中小企業や一部業種に属する企業は不調から脱することができず、憤まんが高まってもいました。


このような中、以前から「自民党内野党=反対勢力」と言われた石破総理への期待が高まりました。多くの国民が「今までの大物政治家にはない新たな手法を、石破総理なら繰り出してくれるのではないか」と考えたのでしょう。

景気回復の恩恵は大企業が独り占めしている感がありましたから、多くの国民が「石破総理なら、大企業から利益を吐き出させる奇策を考えてくれるかもしれない」と期待したのかもしれません。


しかし資本主義で法治国家である日本で、そのような仕組みを作ることは不可能です。

全てとは言いませんが、今回の辞任劇には「大企業中心の体制への反対勢力だからこそと、あり得ない成果を期待され、それを実現できなかったので失望を生んだ」という側面があるのではないかと感じています。



体制派にも反対勢力にも欠けている将来ビジョン

では石破総理は悲劇のヒーローなのか?筋の通らない期待が辞任理由であって、改めるべきところは全くないと言えるのか?

筆者は、そのような意見ではありません。辞任の真の原因は、もっと深いところにあると考えます。


(これは他の政権にも言えることですが)石破総理から「日本を子供たちの世代が幸せに暮らせる国にしたい、そのために今為すべきことを実行したい」という気概を、筆者は感じることができませんでした。

見て取れたのは「予算あるいは法律を成立させたい」というミクロな場面での他党との政策合意に向けた取組みで、一部には換骨奪胎と言える妥協があったようにも感じています。


「国の方向性は『骨太の方針』として提示されている。」確かにそうです。

筆者は『骨太の方針』に完全に賛成する訳ではありませんが、日本の方向性が提示されていることは肯定的に受け止めています。

その中で石破総理には、経済中心の骨太の方針に国民の生活水準・質までを含めるバージョンアップや、広範にわたる方針の実現には中期・長期のアクションプランが必要なので、策定を期待していました。

しかしこれらに取り組んだ気配はありません。将来ビジョンが見えてこないのです。


結局「石破総理が在任し続けたら日本は、日本国民は、どこに連れていかれるのだろう?それは私たちが幸せな世界なのか」との疑問に答えが得らなかったと感じており、それが石破総理辞任劇の深い原因ではないかと考えています。

(重ねて申しますが、本記事は政治に関する批判ではありません。企業・経営者が受け取るべき示唆を探ることを目的としており、次回にそれを深堀します。)




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なお、冒頭の写真はChatGPTにより作成したものです。

 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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