「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第215回

今期が天下分け目の正念場かもしれません

落藤 伸夫 2022年7月4日
 



前回、金融庁が、売上高減少や営業赤字に陥る可能性の高い企業を抽出できるアルゴリズムを2023年を目処に提供する旨の新聞記事について、ご紹介しました。コロナ禍の影響や原材料・燃料価格の高騰などにより困難な状況に陥りそうな中小企業をいち早く見付け出し、金融機関が支援して、倒産を防止することを目指しているそうです。一方でこのような仕組みは、利用の意図や方法などにより真逆の影響が出る場合もあると考えられます。今日は、この点について考えてみましょう。



金融庁が提供する審査アルゴリズム

6月16日の日経新聞朝刊「金融庁、業績AI予測来年メド、中小の倒産防止へ金融機関に支援促す」記事によると金融庁は、膨大な数に及ぶ企業の財務データを収集すると共に、人口動態や資材価格、有効求人倍率、業界別の黒字企業比率などのデータを掛け合わせてAIに機械学習させ、企業業績と相関性があるデータをあぶり出して事業予測に活用するアルゴリズムを作成するそうです。金融機関や信用保証協会などの利用者は、顧客企業の財務や外部環境データを入力すれば、売上高減少や営業赤字に陥る可能性の高い企業を抽出できるようになります。


金融庁がこのようなアルゴリズムを開発提供するのは「事業性評価が進まない現状に危機感を抱き、それを利用したら自然と事業性評価を行えるツールの利用を思い立った」のではないかと、筆者は感じました。金融検査マニュアルによるスコアリングは倒産リスクの回避には役立つが中小企業には不利になると指摘され、金融庁は遂に2019年12月に金融検査マニュアルを廃止しました。


一方で金融庁は2014年に「事業性評価」概念を提示、それまでは「過去実績(例:貸倒実績)」や「個社の定量情報(例:個社の決算)」「個社の定性情報(例:事業の将来性、代表者の資質)」が主に評価されていたところ、事業性評価では『足元の情報(例:地域経済や特定産業の変化、融資変化)』や『将来の情報(例:不動産・原油価格の将来予測)』なども利用可能と示しました。しかしこれを活用する金融機関が少なかった(と推測される)ので「それを使えば金融機関は事業性評価で利用される代表的データを活用することになるアルゴリズム」を提供するに至ったものと考えられます。



審査アルゴリズムは双刃の剣?

金融庁が企業業績予測アルゴリズムを作成したのはコロナ禍の影響や原材料・燃料価格の高騰などにより中堅・中小企業の倒産が増加する兆しがある中で、金融機関に支援を促して中小企業の倒産を防止する狙いがあると記事には記載されていました。


一方で、ビックデータをもとに帰納法ロジックで統計処理されるアルゴリズムによると、連続赤字で債務超過、直近期も改善傾向ない(前年比較で微々たるもの)企業に対して前向きな結論が導出される可能性は薄いと考えられます。報道を見る限り、このアルゴリズムは事業改善計画書による予測は加味されないようなので「これから頑張るからプラス評価して欲しい」と言っても通じない可能性があるのです。



中小企業の自助努力が求められる

このように考えると、このアルゴリズムの活用が進んだ場合には、これまでコロナ禍で連続赤字・債務超過に陥った企業が今期(多くが2022/12決算あるいは2023/3決算)に改善を見せないと、来年度以降は金融支援を受けられる可能性が低くなってしまうと推察できます。


コロナ特別貸付・特別保証で資金調達をし、返済は始まっていないのでキャッシュフローに余裕があるが売上・利益を改善できていない企業は、据置期間が終了する来年度以降、資金調達が必要になると考えられます。そのような企業の多くは「危機的状況から抜け出せない中小企業を優遇する融資制度・保証制度が設けられるはずだから活用しよう」とか、「それでも難しいなら事業改善計画書などを策定、評価してもらえば良い」と考えているかも知れません。しかしこの制度が走り始めると、実績データを重視した判断に傾くと考えられます。今期決算が振るわない企業には前向きな判断が下し辛くなると共に、例え事業改善計画で明るい将来を描いても認められにくくなる可能性が高くなると考えられるのです。


では、何が必要か?今は資金繰りが大丈夫でも、来年度以降はひっ迫する可能性があるなら今、本気を出して事業改善し、今期決算を改善しておくことが勧められます。「資金繰りが厳しくなったら、本気で取り組もう」では遅い可能性があるのです。天下分け目は今期(多くの企業にとって2022年12月期あるいは2023年3月期)です。今、奮い立って会社の立て直しに邁進しましょう。




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なお、冒頭の写真は 写真AC から craftbeermania さんご提供によるものです。craftbeermania さん、どうもありがとうございました。



 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


HP:StrateCutions

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