「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第291回

話し相手になる計画書を作成する

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



2025年を実り豊かな年とするために前回、目指すべき目標について考えました。「会社を立て直すためには高いレベルの目標を立てる必要があるが、現状からすると達成は難しそうなので、無難な目標とする」というお話を耳にすることがあるなか、まずは目指すべき水準を目標として掲げることをお勧めしました。今回は、その実現を目指す取り組みの第1歩として、高い目標を掲げた計画書の利用の仕方を考えます。



無難な目標の致命的なデメリット

「会社を立て直すためには高い目標が必要なことは、分かっている。しかしその数字を社員に見せたら『到底無理だ、頑張っても達成できない』という声が出て、真面目に取り組んでもらえないことは決まっている。それより『これならできそうだ』という目標を立てた方が良い」というお気持ち、とてもよく分かります。


一方で、そのような目標を立ててしまったばかりに、会社の立て直しに失敗してしまった企業があることが、気にかかっています。実例で、考えてみましょう。

その企業はコロナ禍で売上が半減、回復が遅れて黒字化できず、資金が急速に流出していました。コロナ禍で資金調達できたので手元資金はまだ余裕がありましたが、既に大幅な債務超過だったので、必要時に資金調達できる可能性は低い状況でした。

このため資金調達すべきタイミングで「未だ債務超過は解消できていないが、あと数年で解消できそうだ。支援できる企業だ」と判断してもらうことを目指し、それが可能な目標(売上:初年度約27%増、次年度約13%増。初年度で黒字化)を盛り込んだ早期経営改善計画を策定、金融機関に提出しました。


計画策定してしばらく、当該企業は順調に売上を伸ばしました。しかし前年実績10%上積みを実現する頃から上昇スピードが鈍化、初年度末は約18%に留まってしまったのです。

社長に話をよく聞くと、社内には20%に下方修正して目標提示、18%はほぼ目標達成できたとの社内評価だったそうです。営業マンは年度後半に営業活動をセーブして、社内報の作製に力を注いだそうです。

もちろん黒字化は実現できず、債務超過は拡大しました。



「目標が達成できなければ○○する」も計画に盛り込む

このエピソードから、本来は高い目標を目指すべきなのに、モチベーション維持を考えて達成できそうな目標を提示することの恐ろしさが分かると思います。現実に低めの目標が達成できたとして、それを超えて本来の目標達成を目指すことはほとんどありません。

次年度も、本来の水準が受け入れられることは少ないとの印象です。本来の目標を下方修正するとは、会社を立て直すための道筋の扉を自ら閉ざす意味合いを持つ場合があります。


「しかし本当に『到底無理だ』という目標を立ててしまうと、皆のモチベーションが落ちてしまうのだ。どうすれば良い?」一つの方法として、目標との乖離が大きくなった場合に行うべき取組を計画しておくことができます。

例えば「毎月、取組の進捗を関係者で確認し『もっと〇〇すれば達成に近付けると思う』との案を持ち寄る」とか、「3か月たっても達成できない場合、現場メンバーも入れて話し合う」、「半期たっても達成できない場合、好調で知られている同業他社に見学に行き、秘訣を聞く」などと決めておくのです。


このように決めておくメリットの第1は、こちらの達成は外部環境に影響を受けないからです。目標は「顧客が買ってくれる」ことで達成できる、つまり外部環境に影響を受けます。

「新規顧客に毎月1件訪問する」とのアクションプランも、相手に断られてしまう可能性があります。一方で「毎月、取組の進捗を関係者で確認する」は内部での問題です。これが達成されないとは、問題の真因が内部リーダーシップにあると浮き彫りになります。


第2は、計画が困った時の相談相手になってくれることです。計画が上手く進捗せず成果が出なかった場合、「どうしたら良いのだろう?」と途方に暮れて、上手い考えが出てこないことが少なくありません。

しかし計画時に「もし〇〇だったら、△△する」と書いておくと、考えが一歩前進します。計画を「実現に向けて知恵を出し合う、力を合わせて努力し続ける」と励ましてくれるツールにする、ひいては関係者が「△△について、自分は◇◇ができるぞ」と知恵を出し合うツールにすることで「途方に暮れる」危機から救い出してくれるのです。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。

<印刷版のダウンロードはこちらから>



【筆者へのご相談等はこちらから】

https://stratecutions.jp/index.php/contacts/




なお、冒頭の写真はCopilot デザイナーにより作成したものです。

今回もCopilotさんは受験シーズンのためか、学生を主人公にした

子供向けアニメのような絵を何度も描いてくれました。

お願い文を工夫しながら何度もお願いすることで、

やってとこの絵を描いてもらった次第です。

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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