「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第139回

事業性評価の審査を受ける意味

落藤 伸夫 2020年11月23日
 



先週、「年末の資金調達が難しくなった」との声があり、その理由の一つに「コロナ禍による売上低下等の影響で、中小企業の貸借対照表が悪化してきた(自己資本が減少、債務超過に陥っている企業さえある)」ことが考えられると、ご説明しました。


一時的な要因で債務超過になった企業が全て倒産する訳ではないので、実情をしっかりと把握すれば融資が可能な企業は多くあるはずですが、なかなかそれができていません。今、企業をしっかりと見て審査される制度であり、コロナ対策として推進されているのが、日本公庫等の「コロナ特別資本性劣後ローン」です。これに申し込むことで、厳しい状況下でも資金調達できる可能性が生じます。今日は先週に引き続き、この制度の事業性評価について、考えてみましょう。



事業性評価としてのコロナ特別資本性劣後ローン

資本性劣後ローンとは、出資と同じように、いざという時の回収がほとんどない貸付で、かつ、借り手は期日まで返済を行う必要がありません。危急時に売上低下等に困っている企業にとって、とても重宝する借入制度です。一方で貸し手としては「この会社が以前の元気を取り戻せる」という見込みがなければ、融資を行うことはできません。先ほどもお伝えしたように資本性劣後ローンは、いざという時の回収がほとんどない貸付なので、事業の回復に期待する度合いが高いのです。このため貸し手は、借入希望者の事業性を丁寧に解明しようとします。事業性評価を、行うのです。


筆者が、コロナ特別資本性劣後ローンの借入支援を行った例から公庫が行う事業性評価とその効果を、簡単にまとめてみたいと思います。すべての方に通用する話とは言い切れませんが、参考にしてみてください。


まずコロナ特別資本性劣後ローンの申込みには、事業計画書を提出することになります。公庫HPには国民生活事業の指定様式が掲示されています。様式が求める記入内容は、次の4項目です。

1. 新型コロナウイルス感染症の影響、今後の見込み 及び課題、項目、具体策

2. 業績推移と今後の計画(数値計画)

3. 借入金・社債の期末残高推移

(1年以内の民間金融機関による協調支援見込み)

4. 計画終了時の定量目標及び達成に向けた行動計画等

https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/shihonseiretsugo_ninnteishienkikan.pdf


この様式を見て、筆者は「この制度は『今はコロナだから売上・利益が減っても仕方ない』と考える企業には向いていないな。厳しい状況ながら積極・果敢に自らの道を切り拓こういう姿勢を望んでいるのだな」と感じました。今後に向けた取組み記載欄が充実しているからです。


中でも「課題、項目、具体策」は欄の大きさや、数多くの項目が列挙されていることに驚くかもしれません。しかしこれらの項目は、中小企業が事業の発展等を目指す場合に課題になりそうな項目ばかりです。その中から企業にマッチする項目を選び、右欄に取組み説明を加えると、自然に事業改善計画ができるように工夫されています。そうやって考えた課題解決に向けた取組みの効果を売上・利益予測として数値計画にまとめ、実現に向けたアクションプランをまとめる流れとなっており、とても考えられたフォーマットだと感じました。



事業性評価としての審査・効果

計画を提出したら、後は審査結果を待てば良いのかというと、そうではありません。計画内容について質問があり、時には資料の提出が求められます。社長の中には「面倒くさいな」と感じる方もおられるようですが、筆者は「質問や資料提出を求めることで、経営者が会社の将来を前向きに考え、具体的に行動を起こしていくように促しているのだな」と感じる場面もありました。


例えば「大口取引先について、去年から今年の動向を数字でまとめ、変化があれば特徴を教えて欲しい」との質問・資料要請について。それまで「お得意さま向けの売上がいつの間にか減っている。しかし最低量はキープしているので、ありがたい」と思っていただけですが、大口取引先への売上を月別にまとめ、変化について説明を考えるうちに「当社は大口取引先に信頼されているな」、「この信頼に今、答えるには、どうすれば良いのだろう?」と考えさせられました。「この考え方を適用できる先は他にないだろうか?」や、「違うパターンの取引先も分析して、対応を考えよう」という気持ちになります。


事業性評価の審査は、金融機関には「この会社に決算書では表現できない事業性がないだろうか。どうやって読み取り、稟議書に表現できるだろうか」という意識で行われていると考えられますが、対応している企業には「この担当者は我が社に『○○な事業性があるのでは?』と仮説を立て、質問しているな。今まで気付かなかったが、実際に、そういう事業性もある。これを育てていきたい」という気付きを与えます。これは得難い経験と言えます。是非、取り組んでみるよう、お勧めします。




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なお、冒頭の写真は写真ACから まつながひでとし さんご提供によるものです。まつながひでとし さん、どうもありがとうございました。




 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


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