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「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第205回

起こすべき変化をどのように考えていくか

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 


今、多くの中小企業が「3重苦」いや、それ以上の困難に遭遇していることでしょう。一つはコロナ禍を原因とする事業活動の制限(供給での制約)、次に同じくコロナ禍を原因とするインバウンド減少などの需要の減退、そしてコロナ禍やウクライナ・ロシア戦争に端を発する原油高等による諸掛の高騰です。


これに加えてコロナ禍が発生する前からの国際的交易摩擦(例:中国との取引制限)や、失われた20年いや30年にもなる日本経済の腰弱さの影響を受けている企業もあるでしょう。コロナ禍で顧客・取引先の行動・ビジネススタイルが変容し、自社製品・サービスへの需要が失われた企業もあるでしょう。もしそうなると、今後を今までの連続では考えられず、変革が求められることになります。ではその変革をどのように創造していくか、考えていきましょう。



変化のパターン:PDCAとOODA

困難の原因が景気変動ではなく、これら現象であることは、対処の方法も景気変動の場合とは異なることを意味しています。景気変動の場合には「景気循環」という言葉もあるくらいで、「景気が時にはかなり悪くなったとしても、そのうち改善する」と考えることが可能でした。「じっと耐える」という対処法が有効だったのです。しかし先に挙げた諸要因から事業環境が変化したのなら、それに対応する必要があります。自社も変化するのです。


多くの経営者が、この「変化」に苦労しておられるように感じます。「我々がこれまで変化しなかった訳ではない。事業環境を微に入り細に入り分析、顧客の求めや市場のルール等に対応する度合いを高められるよう細かい調整をしてきた。これが、日本が世界に誇る『カイゼン』だ。コロナ禍などで求められる変化と、我々が今まで行なってきたカイゼンと何が違うのか?」という声も聞こえます。確かに日本企業がこれまで、大企業も中小企業も絶えず「カイゼン」を行なってきたことが日本産業、特にものづくりにおいて強みになってきました。


しかし、今直面している困難にカイゼンでは対応できなくなってきたことも、明らかだと思います。日本企業の製品がいくら品質が良くても、リーゾナブルな価格で提供されようとも、海外の製品に太刀打ちできないのです。そのような「勝ち組」の海外製品を観察すると、 たぶん「カイゼンの積み重ね」の末に出来上がったのではないと考えられます。いわば「飛躍」があるのです。


変化を狙いながら片や「カイゼン」となり、片や「飛躍」になる違いは、なぜ生じるのか?原因の一つに思考法が挙げられます。カイゼンを行う場合の思考法は、皆さんも良くご存じでしょう、PDCA(P:Plan、D:Do、C:Check、A:Act)です。品質改善やコスト削減等の大きな目標の実現に向けて計画を立てて実行、目標との差異を検知して対策を立てていくのです。一方で最近、OODAという思考法が知られてきました。OはObserve(観察)で、次のOがOrient(方向付け)、DがDecide(判断)、AがAction(行動)を表しています。


こういうと「PDCAもOODAも、始点は違うがどちらも同じサイクルなのではないか?」と思われる方もおられるでしょう。以前の私も、そうでした。しかし両者には大きな違いがあります。PDCAは品質改善の場面で多く活用されてきました。品質向上という大きな目標を立てて、それを実現するよう一歩一歩前に進んでいくのです。一方でOODAは戦闘機による空中戦で活用される思考法がベースだそうです。敵味方が空中で対峙した場合、1回目の対峙では両者は様子見し、ターンして次に対峙した時にパイロットは「1回目の対峙で悪かったところを改善しよう」と思うでしょうか?そうではなく「今回にまみえた時に最善の方法を選ぼう」と考えるでしょう。その次でも同じように考えると思います(このあたりの思考は、映画「トップガン」を見ると実感できます)。


事業における変化を目指す場合にも、これと同じことが言えそうです。状況に対応しようとする時、「大きな目標に向かって調整していこう」というPDCA思考をするとカイゼンになり、「状況に応じて最善を選ぼう。先ほどまで則っていた方針を捨てるのもやぶさかではない」というOODAになると、飛躍に繋がる可能性が生まれます。


事業環境に大きな違いがない、あるいは緩やかに変化する時にはPDCA思考が有効でした。しかしこの2年間で事業環境が大きく変化(例えばインバウンドは数千万人から数万人規模まで減少)する中、OODA思考がポイントだと考えられます。例えば「業種を変える」という今まで考えたこともない選択肢も検討する価値がある、という意味でもあります。会社を守るため、是非、これまで使ったことのない思考法も活用してみてください。




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本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。

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なお、冒頭の写真は 写真AC から 月舟さんご提供によるものです。月舟さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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