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「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第119回

事業改善の方向性

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



ここ数回にわたり、コロナ禍のような重大なインシデントに見舞われた時には当座の資金繰りが最も大切であること、そして資金調達できたら同時に事業改善の検討も始めるべきことをお伝えしてきました。「緊急事態宣言が解除されても、なかなか調子は戻らない。焦らず、成り行き任せて対応していこう」と考えるのではなく、資金を手にしたら攻めの姿勢で事業改善に取り組むのです。

こう申すと「事業改善というが、どんなことを考えれば良いのだ」と質問される経営者がおられます。事業改善は、業種・業態により、また各企業がどのようなビジネスモデルで操業しているか、強み・弱みは何か等々に影響されるため一概に言えませんが、ここで代表的な方向性を例として挙げていくことにしましょう。



既存顧客リピート向上・顧客開拓

このような時期に真っ先に検討して欲しいのが売上の拡大です。「しかし、広告・宣伝は今までもしていたが。」はい、これまで行なってきた広告・宣伝策を続けた場合、得られる成果はこれまでを大きく超えることはないでしょう。しかし、自社商品の新たな利用形態を提案などすることで、既存顧客のリピート率を向上させ、新規顧客を開拓できる可能性があります。

前回もご紹介したあるレストランは、人気メニューの宅配に取り組むことで売上を拡大することができました。見栄えがして長期保存が可能なメニューを、姿が崩れることのないよう真空パックして食卓に届けるのです。家族の誕生日などの記念日には毎年、そのレストランを利用している顧客はSNSで「今年は行けないかと思っていましたが、自宅で美味しい料理を楽しめました。ありがとうございます!」と喜びの声をあげていました。その書き込みを見て友達も「いいね」を押し、実際に注文した人もいるようです。

最近「おや」と思ったのは、大都市のビジネスホテルです。「まる1日、仕事に集中できる環境を手に入れる」を提案しているとのこと。実際、筆者の友人も仕事が溜まった時に利用したそうです。郊外の観光ホテルの中でも、近隣住民に「今まで知らなかった近所の魅力を見つけよう」と訴えている例があるようです。自社製品について今までと違う用途、違う場面での利用を提案して売上を拡大できる可能性があります。



業種・業態転換

また飲食業の例ですが「もともと旅館だった」とか「肉屋だった」、「仲買人だった」、果ては「ファンだった」という話をよく聞きます。それほど業界転換を経て今の姿になった企業が多いのです。「うちは苦労しているのに、儲けているのは川上(仕入れ先)や川下(販売先)だ。我が業態には厳しい時代になってきた」とお考えの経営者は、その儲かっている川上や川下に自ら乗り込んでいくことを検討しましょう。完全に転換する方法もあれば、看板は新しい業種・業態にするけれど以前の業種・業態を続けてシナジー効果を期待するアプローチもあります。

業態転換の親和性として(例外は多いながら、やはり一般的に言えるのは)類似業種での実績です。上の例で、旅館は食事を提供した実績があるでしょう。肉屋や仲買人は仕入れでの強みがあります。一方で、ファンには事業上の接点がありません。金融機関が創業企業(多くの場合、サラリーマンがファンであった事業へ転業したと言える)への融資を審査する際に、新しく始める事業に絡む仕事歴やノウハウの蓄積を非常に重視しますが、事業者が業種・業態転換する場合も同様のことが言えます。



財務リストラ

コロナ禍のような大打撃を受けた時には、財務リストラの検討を忘れてはなりません。筆頭は遊休資産売却ですが「事業用なので売れない」という場合もあるでしょう。その場合には一部を賃貸に提供する方法もあります。



経費削減

事業改善というと経費削減が真っ先に浮かびますが、今の世の中「経費削減はやり尽くした」という企業がほとんどです。にもかかわらず、多くの企業が手を付けていない分野があります。それはIT導入です。IT(機材・ソフトウエア)により目覚しく省力化できるはずの仕事を、非効率のまま放置している企業が少なくありません。政府も補助金などでサポートしていますから、是非、前向きに検討したいところです。



「なるほど、事業改善にもいろいろアプローチがあるのだな。」その通りです。国が提供している「事業分野別指針」には事業分野(業種)毎に典型的な事業改善手法が紹介されています。もしよかったら参考にしてください。

<「事業分野別指針」「基本方針」>



<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。




なお、冒頭の写真は写真ACからfujiwaraさんご提供によるものです。fujiwaraさん、どうもありがとうございました。




 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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