「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第175回

「将来は現在の延長にある」を疑ってみる

落藤 伸夫 2021年8月30日
 


もう何度も筆者が書き込み、皆さんも見飽きた状況だと思いますが、新型コロナウイルス感染症の蔓延が止まりません。8月後半からは、新生児や糖尿病を患っていた方などが入院できなかったがために亡くなってしまったという報道を目にしました。実際に、医療崩壊が始まっていると言わざるを得ません。このような医療現場でのあまりの惨状に目を奪われている間にも、実はいろいろな業種・業態、地域などで「産業崩壊」と言える状況も発生しています。このような事業環境下、企業は何を考える必要があるのか、考えようと思います。



復旧で良いのか?

これまでも日本には何度も産業に大打撃が襲ってきました。最近、特に増えたのは自然災害で、今年も豪雨が何度も発生、水没や土砂災害に見舞われた地域・企業があります。産業だけでなく生活、社会にも直接的な打撃を与えました。一方で、景気における大打撃も、最初は産業に影響を及ぼし、次第に生活、社会にも大きな影響を与えます。リーマンショックの大打撃を覚えている方も多いでしょう。このような打撃を受けた場合、企業も行政もまず考えるのが「復旧」です。以前に行なっていた産業活動、そして生活・社会基盤等を元に戻すという方向性は、とても自然な対応だと考えられます。


一方で今回のコロナ禍は、今まで経験したことのない打撃だと感じています。最初は中国武漢で発生した「対岸の火事」で、程なくして日本にも上陸しましたが、昨年までは疫病の危険性と経済への打撃を天秤にかけると対策が大袈裟だと感じる人も少なくなかったと感じます。しかし今は医療崩壊の現実を目の当たりにして、政府が及び腰なのに街の人たちの方が「ロックダウンが必要ではないか」と意見するような状況。ワクチン接種が進むまでこの状態がしばらく続くと、産業や人々の意識、そして社会に大きな変化を生じさせると考えられます。一時は一世を風靡したインバウンドも、世界中の人たちが旅行に行くどころではなくなった今、2019年の勢いを取り戻すには相当な時間がかかると考えられます。


このような状況の中、コロナ禍により経営上の大きな打撃を受けている企業経営者としては何を目指すべきなのでしょうか?筆者としては「何がなんでも復旧を目指す」あるいは「取組みとして、復旧しか視野にない」という対応はお勧めしていません。他の道も検討に入れることをお勧めしています。



復旧のリスク

そういうのは、復旧のリスクが高いと考えられるからです。一部の例外を除けば、今は皆、コロナ禍が過ぎ去って以前の状況に戻り、事業も業績も以前と同じように回復することを望んでいると思われます。「コロナ禍が過ぎ去る」期待は、当然です。しかし「以前と同じ状況に戻る」との期待にはリスクが生じる可能性があります。以前と同じ状況に戻らない可能性があるのです。そのため「以前と同じ事業を行い、以前と同じ成果が得られる」と期待することにも、リスクが生じ得ます。


このような状況下で「復旧」することには、非常に大きなリスクが伴います。復旧には費用がかかる、時には甚大な費用がかかるからです。それほどの投資をしたのに変化の程度が大きいと、その投資が無駄になる可能性があります。長引くコロナ禍によりキャッシュの流出が激しかった企業にとって、そのリスクは甚大なもの、企業の命運を左右するほどの大きさになりかねません。



今までとは違うビジョンを描く

ここにきて多くの企業経営者が、今までとは違うビジョンを描いています。「すごいな、将来は分からないのに。それとも彼らには世の中がどのように変化するのか、見えているのだろうか?」そのような経営者とて、将来が正確に見通せる訳ではありません。しかし彼らに聞くと「今までを継続しても事業の回復は望めない、失われたキャッシュを取り戻せないことだけは確実だ」と言います。例えばオフィス街の駅近に飲食店を構える経営者は「全ての要素を考えても、2019年末に訪れてくれたお客様(数)が数年で戻るとは考えられない」と言いました。彼らは新天地を求めているのではなく、危険からいち早く離れることを目指しているのです。


「どこに逃げるか分からすに行動するなんて蛮勇だ。」私はそうは思いません。彼らは大雨が降り頻る中、自分が川の中洲にいることに気が付き、すぐにそこから出る決断をしたのです。次に行く場所について、以前から決めていた既存事業から離れた事業を選んだ経営者もいれば、自分の土地勘が生きる事業を選んだ人もいます。しかし彼らのビジョンでは、そこは新天地ではないようでした。新しい事業で試行錯誤が必要との前提で、「次の新天地で楽をしている」ビジョンではなく、「次の新天地でもベストを模索している」ビジョンを描いているのです。コロナ禍が引き続く今、経営者にはこのような勇気が求められている可能性があると、筆者は強く感じています。




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なお、冒頭の写真は写真ACから タマヤ さんご提供によるものです。タマヤ さん、どうもありがとうございました。



 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


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